「英語のニュースサイトで学習しようとしたが、意味が全然わからない」
海外の英語ニュースサイトを使った学習は人気です。
・自然な英語に触れられる
・楽しみながら英語力をあげられる
・世界情勢の勉強にもなる
などのメリットがあるからです。
しかし海外ニュースサイトを使った英語学習は、あまりおすすめできません。なぜなら、多くのニュースは海外の「文化」を知らないと理解が難しいからです。そのため、いくらニュースを熟読しても意味がわからず挫折してしまいがち。
実際、私がビジネス英語コーチとしてサポートする中、ニュースサイトで英語学習を始めて、挫折した人を何人も見てきました。
そのため結論としては、
- 日本のニュースを英語で読む
- 日本語で異文化について学ぶ
アプローチがおすすめです。
タップできる目次
海外の英語ニュースサイトを使った勉強をオススメしない理由
海外ニュースの2つの難しさ
海外ニュースを使って勉強するには2つの難しさがあります。
- 使われる英語が難しい
- 文化的背景を知らないと、内容を理解できない。
一つずつ解説します。
使われる英語が難しい
海外ニュースで使われる英語は単語、表現が難しいです。
なぜなら、英語学習者向けの教材ではなく、ネイティブスピーカーが読んだり聞いたりする英語だからです。
想像してみて下さい。
NHKニュースを海外の日本語学習者が見たら、難しいと感じるでしょう。
実際、アメリカの大手雑誌”New York Times”は、TOEIC満点でも辞書なしで読むのは困難と言われています。
ネイティブが使う自然な英語だからこそ、日本人には難易度が高いのです。
文化的背景を知らないと内容を理解できない
2つ目の理由は、文化的背景を知らないと、海外ニュースの内容を理解できないことです。
こちらの方が、より本質的な理由です。
海外ニュースは、その国の文化や風習を暗黙の前提として書かれます。
そのため、文化的背景を知らないと、日本語に翻訳しても意味を理解できません。
以下で、アメリカのニュースを例に具体的に見てみましょう。
アメリカニュースの例|大統領が七面鳥に恩赦(おんしゃ)!?
アメリカ大手メディアCNNのニュース(日本語版)
少し長いですが、以下の記事を読んでみて下さい。
→(CNN)トランプ大統領、七面鳥に「恩赦」 弾劾調査にからめた冗談も
米国のトランプ大統領とメラニア夫人は26日、ホワイトハウスのローズガーデンで、毎年恒例となっている「七面鳥恩赦式」を行った。式典の最中には現在、下院で進められている弾劾(だんがい)調査にからめた冗談も飛び出した。
恩赦を受けた七面鳥は「ブレッド」と「バター」の2羽。
トランプ氏は式典の最中に、七面鳥はシフ下院情報特別委員長の地下室に出頭するよう召喚状を受け取っていると冗談を飛ばした。トランプ氏は、「民主党員は私が七面鳥に優しすぎると非難しているようだ」とも付け加えた。
感謝祭にあわせて七面鳥を救う習慣は、リンカーン大統領のときにまでさかのぼるとされる。民間伝承によれば、リンカーン大統領の息子が感謝祭の夕食に出される七面鳥を助けてくれるよう頼んだという。ケネディ大統領も恩赦を行ったと記録に残っているが、ホワイトハウスの公式行事となったのは1989年のブッシュ大統領時代。
日本語に翻訳されていますが、このニュースを読んで意味を理解できる日本人は少ないのではないかと思います。
「感謝祭にあわせて、七面鳥に恩赦(おんしゃ)をする」とは、どういうことなのでしょうか?
注:恩赦とは「罪をゆるす」こと
意味が理解できないのは、言語の問題ではなくアメリカの文化を知らないからです。
毎年11月に恒例のニュース
上記のニュースは、毎年11月の恒例行事を報じたものです。
「感謝祭(Thanks Giving Day)」という言葉を聞いたことがある人は多いかと思います。毎年11月の第4木曜日に定められたアメリカの祝祭日です。
感謝祭の前日、大統領がホワイトハウスで二羽の七面鳥を屠殺(とさつ)される運命から救う(恩赦を与える)、アメリカの恒例行事になっています。
さらに、理解を深めるには「そもそも感謝祭とは何か?」を知る必要があります。
そもそも感謝祭(Thanks Giving Day)とは?
1620年、イギリスからアメリカに移住したピルグリム・ファーザーズ
時はアメリカ建国前。キリスト教宗派争いのため、イギリスを抜け出し、海を渡ってきた人々がアメリカ東海岸にたどり着きました。1620年のことです。
宗教的な自由を求めてアメリカに渡ってきた彼らは、ピルグリム・ファーザーズとも呼ばれています。
厳しい冬に餓死者が続出
たどりついたアメリカで農耕を始めたのですが、イギリスから持ってきた種子がアメリカの土地に合わなかった、1620年の冬が大変厳しい寒さだった、などの理由で多くの餓死者が出ました。
そのとき、アメリカに先に住んでいたインディアンのワンパノアグ族が、入植者(ピルグリム・ファーザーズ)を助けました。具体的には、トウモロコシの栽培方法などを教えました。
インディアンへのお返しの宴会で七面鳥がふるまわれた
幸いにも翌年の1621年は豊作となり、入植者の生活も安定しました。
この年の秋、ワンパノアグ族への感謝のために盛大な宴(うたげ)を開きました。収穫を祝う宴会です。3日間続き、入植者53人とワンパノアグ族90人が参加したと言われています。
このときに、七面鳥がふるまわれました。そのため、今でも感謝際に七面鳥を食べる風習が生まれました。
リンカーン大統領時代に、アメリカの祝日として定着
その後、第16代大統領エイブラハム・リンカーンの時代(1847年~1849年)に、感謝祭はアメリカの祝日として定着しました。
南北戦争の終結後に祝日に制定され、国家の団結を取り戻すために、家族の集まりを奨励したとのこと。
現在でも、多くのアメリカ人は感謝祭を家族、親戚、親しい人と一緒に過ごします。
七面鳥に恩赦(おんしゃ)の意味とは?
では、なぜ感謝祭の前日に、アメリカ大統領が七面鳥に恩赦(おんしゃ)を与える行事が行われるのか?
諸説ありますが、ジョン・F・ケネディ大統領(1961年~1963年)時代に始まったと言われています。
感謝祭用に、ケネディ大統領に七面鳥が贈られました。”Good Eatin’, Mr. President.” (美味しく食べてね、大統領)とのメッセージが添えられて。しかし、ケネディ大統領はこの七面鳥を食べませんでした。そのため、食べられる運命だった七面鳥を逃がす(恩赦を与える)風習ができました。
その後、H・W・ブッシュ大統領が、1989年に「七面鳥の恩赦(Turkey Pardon)」を行事化しました。
異文化を知らないと、英語力を伸ばしても海外ニュースは理解できない
ここまでアメリカの文化、歴史を理解すると、「感謝祭に大統領が七面鳥に恩赦」というニュース記事の意味がわかるようになります。
反対に、異文化を知らないと、いくら英語力を伸ばしても海外ニュースは理解できません。
英語ニュースで学ぶには?
ここまで説明してきたように、海外の英語ニュースで学ぶには、以下の難しさがあります。
1.使われる英語が難しい
2.文化的背景を知らないと、内容を理解できない。
これらを踏まえると、以下のアプローチがおすすめです。
- 日本のニュースを英語で読む
- 日本語で異文化理解を深める
日本のニュースを英語で読む
ニュースを使って英語学習をするのであれば、日本が題材のニュースを英語で読んだり聞いたりするのをオススメします。
なぜなら、日本のニュースであれば、文化的背景を理解しやすいからです。
たとえば、以下のニュースメディアがあります。
NHK World Japan
日本に住む外国人向けに、NHKが提供するニュース番組です。当然、日本に関するニュースがメインです。
ニュースにはスクリプト(原稿)もついているので、聞き取れているかのチェックもできます。
ディクテーション(英文を書きとるトレーニング)やシャドーイング(英文の後について発声するトレーニング)の教材としても活用できます。
The Japan Times
日本のニュースをメインに扱う英字新聞です。
ただし、記事の閲覧数には制限があります。
会員登録なし :5本/月
会員登録(無料):10本/月
Digital light(月額900円):80本/月
Digital(月額3,000円):無制限
まずは、会員登録なしで読んでみて、自分に合うかをチェックしてみるとよいでしょう。
もし、The Japan Timesの記事が少し難しいと感じるようであれば、以下の週刊誌を試してみるとよいでしょう。
上記と同じくジャパンタイムズが発行している、英語学習者向けの英語週刊誌です。
難しい単語には日本語注釈がつく、全文の日本語訳がwebページに公開されている、など英語学習者向けに設計されています。
有料(3ヵ月で3,390円⇒1か月あたり1,130円)ですが、ニュース記事の速読トレーニングにも使えます。
日本語で異文化理解を深める
海外ニュースを理解するには、海外の文化を学ぶこと、つまり異文化理解を深めるのが重要です。
海外文化については、日本語で学ぶとよいでしょう。なぜなら、英語で異文化について学ぶのは負荷が大きいからです。
海外文化を学ぶには、最初に「異文化理解」の全体像を学ぶのがオススメ。海外文化の全体像や、ものの見方が身につくためです。
文化を表現する指標として最も有名なのは、オランダの学者ヘールト・ホフステードが提唱した文化の6次元モデルです。
1960~70年代に、11万6千人のIBM社員を対象に72か国20言語で調査が行われ、国別の特徴を指標化しました。
やや古い研究ですが、現在でも有効です。
具体的には以下6つの指標。
- 上下関係の強さ(権力格差)
- 個人主義傾向の強さと、集団主義傾向の強さ
- 不確実性回避の強さ
- 「男性性(男らしさ)」の強さ
- 長期主義的傾向の強さと、短期主義的傾向の強さ
- 人生の楽しみ方:快楽的か抑圧的か
これらの指標で日本、アメリカ、中国、ドイツなどを比べると国民性の特徴が見えてきます。
以下の記事では、ホフステードの6次元モデルを使って、海外と日本の文化の違いについて、具体例を交えて詳しく解説しました。興味がある方は参考にしてみて下さい。
→異文化理解の必要性 ~海外とコミュニケーションする人必見~
まとめ|海外の英語ニュースを読むには、異文化理解が大事
海外の英語ニュースを理解するためには、異文化理解が重要となります。
しかし海外ニュースには、文化的背景の解説がされていないことが多く、英語で記事を読むのはハードルが高いです。
そのため、
- 日本のニュースを英語で読む
- 日本語で異文化理解を深める
アプローチが有効です。
特に「異文化理解力」を鍛えないと、いくら英語力を伸ばしても外国人とのコミュニケーションは困難です。
そのため、実践の場で英語を使いたい人は、異文化について学ぶことをおすすめします。
↓↓↓IQ(知能指数)、EQ(心の知能指数)に続く、第3の知能指数として注目を集める「異文化理解力(CQ)」について詳しく解説しました。グローバルで仕事をしたり、海外の方とコミュニケーションをする方は読んでみて下さい。