イングリッシュカンパニーやプログリットなど、英語コーチングスクールが、「第二言語習得論をもとにした科学的トレーニングを取り入れている」と聞いたことがある人もいるかと思います。
「科学的トレーニングってなに?」
「どんなトレーニングをすればよいの?」
『科学的トレーニングで英語力は伸ばせる!』は、このような疑問に答えます。
残念なお知らせは、「このトレーニングをやればOK!」という魔法はないということ。なぜなら、最適なトレーニングは一人ひとりで違うから。
その代わりに、本書を読むと「どんな人が、どのようなタイミングで、どのトレーニングをするとよいのか」がわかります。
著者の田浦秀幸教授は、言語学の専門家。学問的な研究だけでなく、研究成果を英語教育現場につかう応用研究も行っている方です。
- 個人的な体験や、些末なテクニックではない、本質的な英語学習法
- 何のために、どのトレーニングをするのか? がわかる
- 「リスニング力アップ」を例に科学的トレーニングを紹介
- 本書のレビューまとめ、本書がオススメな人
タップできる目次
英語の科学的トレーニングとは何か?
世の中にはたくさんの英語学習法があります。ところが、個人的な体験談や思い込みに基づくものが多く、きちんと効果を検証された学習法は多くありませんでした。
しかし1970年代以降、「第二言語習得研究」とよばれる学問領域が発展した結果、効果が検証された英語トレーニング法が明らかになってきました。
第二言語習得研究とは
そもそも第二言語習得研究とは何なのでしょうか?
第二言語習得研究とは、人間が言語を習得するプロセスやメカニズムを研究する学問領域です。具体的には、言語学、認知科学、脳科学などの中で、外国語習得に関する研究が集まった際領域の研究です。
では第二言語習得研究は、私たち英語学習者にとって何か役立つのでしょうか?
それは、どのようなトレーニングをすれば英語力を効果的に伸ばせるか? がわかることです。
個人の体験談や思い込みではなく、科学的、統計的に効果があるトレーニングです。つまり、短い勉強時間で英語力を伸ばせる方法がわかるということ。
「このトレーニングだけやればOK!」のような魔法は存在しない
「英語力を伸ばせるトレーニング法を知りたい」と思う方も多いかもしれません。
しかし、残念ながら第二言語習得研究では以下のことがわかっています。
「このトレーニングをやれば、誰でもすぐに英語力が伸びる」という魔法のトレーニングはないということが。
スポーツの練習を想像するとイメージが沸きやすいです。たとえばテニス。
② 筋トレ
③ ルール・戦略の勉強
④ 練習試合
⑤ 問題点認識
⑥ 矯正練習
⑦ 公式試合
このようなステップで練習をするのが一般的です。素振りもできないのに、いきなり試合をしても上達しないことはわかると思います。
トレーニングに取り組む順番が大切|一人ひとりの課題にあわせる
英語習得もスポーツと似ています。具体的には、以下のステップで学習を進めると効果的。
② 発音練習・英単語の習得
③ 異文化の勉強
④ 映画やドラマを見てみる、英会話
⑤ できないことを認識(課題に気づく)
⑥ できないことを強化するトレーニング(ディクテーション、シャドーイングなど)
⑦ ビジネス場面で使用
英語初心者の人に、いきなりビジネスの場面で使う英会話を教えてもあまり効果はありません。
テニスの素振りができない人が、いきなり公式試合に出ても意味がないのと同じです。
つまり、効果的に英語力を伸ばすには、一人ひとりがつまづいている課題を発見し、課題に応じたトレーニングを続けることが重要。
「これだけやればOK」という魔法のトレーニングはありません。
リスニング力を伸ばす科学的トレーニング
「とはいえ、効果的なトレーニングを知りたい」という方のために、本書で紹介されているリスニングの科学的トレーニング法を紹介しておきます。(本書には、他にもリーディング、ライティング、スピーキングに関するトレーニング法が書かれています。)
まず、大前提として単に英語を聞き流すだけでは、リスニング力は伸びません。
わからない言葉を、いくら聞いても分からないからです。
リスニング力を分解すると、以下の2つに分けられます。
① 英語の音を聞き取るスキル
② 聞き取った意味を理解するスキル
これらに対応したトレーニングを行います。
① 英語の音を聞き取るスキルを鍛えるには、ディクテーションと呼ばれるトレーニングが有効。
一方、②聞き取った意味を理解するためには、無意識に英語音声を聞き取れることが大切(音声知覚の自動化)。そのためには、シャドーイングが効果的。
一つずつ説明します。
英語の音声変化
最初に英語の音を聞き取る難しさを説明します。以下は、本書に紹介されている事例。
たとえば、「ペイダサヴィズィッ」という音が聞こえたとします。
何を表しているのでしょうか?
実は、”paid us a visit”のことです。”paid"と"us"iが連結して「ペイダス」となり、"us"と"a"が連結し「アサ」となります。
また、visitの最後のtは音としては脱落して読まれない場合があるため、「ヴィズィッ」のように聞こえます。
その結果、「ペイダサヴィズィッ」と聞こえてくるのです。
ここで紹介した、「連結」と「脱落」は英語の音変化ルールです。ネイティブは自然と使っています。
これらの英語の音変化を聞き取れないと、ネイティブが話す英語を聞き取ることはできません。
ディクテーションで英語の音声変化に対応する
ディクテーションは、これらの英語の音変化に慣れるのに有効なトレーニングです。
以下のステップでトレーニングすると効果的です。
① 短めのセンテンスを何度かリスニングして書きとる
② 聞き取れなかったところ、間違えたところを、スクリプト(原稿)を見てチェックする
③ 聞き取れなかったところを中心に、スクリプトを見ながら発生練習する
これらのトレーニングを1ヵ月程度続けると、ストレスなく英語の音を聞き取れるようになります。
シャドーイングで音声変化を自動化する
シャドーイングとは、英語の音声のあとについて自分で発声するトレーニングです。
シャドーイングをすることで、英語の音変化を無意識に処理できるようになります。
なぜなら、実際に自分で発音するためです。話せる音は、聞き取れるからです。
音声をモノマネすることを意識してシャドーイングをすると効果的です。
リスニングの上達には時間がかかる
ディクテーションやシャドーイングなどのトレーニングにより、効果的にリスニング力を高められます。
しかし、リスニングの上達には時間がかかります。なぜなら、リスニングができるようになるには、どれだけの時間英語の音声を聞いたか、英語に触れたかという絶対量が重要だから。
たとえば、リスニングの量をこなすため、自分の好きな映画をくりかえし見るのも有効です。
2回、3回ではなく、10回、50回、100回と繰り返し見ることで、だんだん字幕なしてもセリフを理解できるようになりますし、英語の音変化も聞き取れるようになります。
短期でリスニング力を身につけるには、先生についてトレーニングが効果的
しかし、実際にはどうしても短期でリスニング力を上げたい人も多いかと思います。3ヵ月後の海外出張が決まった、海外部門への異動が決まった、外資系企業に転職をしたい、などです。
短期でリスニング力を身につけるには、先生についてトレーニングをするのが効果的です。
たとえば、英語の音声変化を身につけるとき。
先生が横で見ていて、徹底的にフィードバックすることが効果的です。「この部分が聞き取れないのは、こういう理由で、こういうルールがあって・・・」という感じです。
また、意味理解を素早くやるとき。
シャドーイングなどのトレーニングを、ヘトヘトになるくらい負荷をかけてやると効果的。このとき、教材のレベル調整や、ミスの修正などのために、先生がついていた方が効果的です。
このように、短期間でリスニング力を伸ばしたいのであれば、独学ではなく先生についてトレーニングをするのことが有効です。
『科学的トレーニングで英語力は伸ばせる!』の高レビュー
ここまで、『科学的トレーニングで英語力は伸ばせる!』の内容を紹介してきました。
次に本書の口コミ、レビューを紹介します。Amazonのレビューを高レビュー、低レビューに分類しました。
これらのレビューを見た上で、『科学的トレーニングで英語力は伸ばせる!』は、どのような人にオススメかをまとめます。
なぜ、このトレーニングが必要か、理由がわかる
英語の勉強法と言えば、TOEICなどの点数が高い人が、自分自身の経験をもとに、
『こうすればいい!』
と言ったものがたくさんある。でも、やたら根性論だったり、人によってやったことがバラバラでだった。
なんのためにシャドーイング、ディクテーション、サイトラ(※)を行うのか。
(※筆者注)サイトトランスレーションの略。英文を小さな意味のかたまりに分け、それをぱっと見て日本語に訳すトレーニング
それらはいつ、どのタイミングで行うのが効率的なのか
そういったことに1つずつ丁寧に回答してくれるのが本書です。
『なるほど、今のレベルの自分ならシャドーイングが必要だ』
『まずは単語を覚えることだ』
『文法を復習しよう』なぜ、それが必要なのかが明確にわかり、英語学習の指針になる。
むやみに英会話スクールに何年も通って何十万も支払うぐらいなら、
英語教材を一式揃えて、この本に書かれていることを半年間しっかりする方が何倍も効果がある。すごく良い本に出会えて感激です。
英語学習の理論と実践の両方がわかる
この類の本は書店に山ほどあふれているが、概ね「私はこんな方法で英語を身に着けた(教えている)的な実践偏向型」または「第二言語習得論の知見をつらつら並べた理論第一型」の2つに分類される。
本書は、高校での教授経験を持ち、現在は大学院で教鞭をとる、一級の言語学者によって書かれており、理論と実践どちらに偏ることもなく、確固とした根拠を提示しながら明日から役に立つ英語の学習方法が提案されている。
些末なテクニックや精神論ではなく、英語勉強の原理原則を理解できる
英語の学習法に関する本はそれこそ数え切れないほどあるけれど、それらとは一線を画す。精神論や些末なテクニックの話ではない。あくまでも50年近く研究が重ねられた言語習得に関する学問に基いているのだ。
ではTOEICなどのテストに効力がないかというとそういうわけではない。インプットの重要性も書かれており、それはTOEICなどにも通じるところがある。これを基本において英語学習に取り組めば確実に効果があるだろう。
『科学的トレーニングで英語力は伸ばせる!』の低レビュー
次に、本書の低レビューを紹介します。
英語上級者がぶつかる壁については書かれていない
私自身、英語を長く勉強してきているので、この本が言っている文法の重要性などはよく理解できます。
ただ、私がこの本に期待していたのは、上級者がぶつかるスピーキング力をどうやって鍛えるかという内容だったのですが、それについてはあまり目新しい説明はありませんでした。
この本は、初級~中級くらいの人が、英語学習の方法を見直すためには有用かもしれませんが、真剣に勉強していてそれなりのレベルに達している学習者にとっては、それほど役に立つ本ではないと思います。
ENGLISH COMPANYは凄そうだが、本書だけでは英語力は伸びない。トレーナーの存在が大切
ENGLISH COMPANYがすごそうだったので、それについて知りたいなと思って本書を読んだが、本の内容は全然すごくなかった。
ENGLISH COMPANYの登場で、英語学習で重要なことは「自分の英語力を把握し、それに合ったトレーニング方法を選ぶこと」だと思うが、自分でそれを判断するのは難しく、トレーナーが重要な役割を果たしていることがわかった
※筆者注;ENGLISHT COMPANY創業メンバーの一人が、本書の著者 田浦先生に師事していました。
具体的な学習面のアドバイスがない
第2言語習得論(SLA)を薄く広く、新書並の内容で紹介している。短時間で一通り理論が抑えられるのは良かった。反面、具体的な学習面のアドバイスはない点がマイナス。この本を読んだだけでは何をして良いのか分からない。
『科学的トレーニングで英語力は伸ばせる!』がおすすめな人
- 些末なテクニックや精神論ではない、原理原則にもとづくトレーニング法を知りたい人
- 何のために、どのようなトレーニングをすればよいかを知りたい人
- 初級者~中級者で、効率的な英語学習法を実践したい人
- 社会人で、これから英語学習をやり直したい人
具体的な英語学習をはじめる前に読むべき本と言えるでしょう。
まとめ|英語学習をはじめる前に読むべき一冊
『科学的トレーニングで英語力は伸ばせる!』には細かい英語テクニックは書かれていませんし、本書を読むだけで英語力が上がるわけではありません。
その代わり、「どのタイミングで、どのようなトレーニングをすると、効果的に英語力を伸ばせるのか?」「その理由は何なのか?」という原理原則、本質的な内容を学べます。
大学の先生が書いていますが、一般の英語学習者にも理解できるよう、かみ砕いて解説してくれます。
本格的に英語学習をはじめる前に、本書を読んでおくと無駄な遠回りをしなくてすむでしょう。
本書は読みやすいのですが、実は「どのレベルの学習者が、何のトレーニングをするとよいか?」に関し、あまり体系だって書かれていません。
もう少し具体的に、「いつ、どのような」トレーニングをするのがよいか知りたい方は、『マンガでわかる 最速最短! 英語学習マップ』を読んでみることをおすすめします。
↓↓↓レビュー記事
ちなみに、『科学的トレーニングで英語力は伸ばせる!』と、『マンガでわかる最短最速! 英語学習マップ』は、英語コーチングスクールのイングリッシュカンパニー(ENGLISH COMPANY)の無料体験レッスンを受けると、無料でもらえます(数に限りがあるので、いつまで無料でもらえるかは分かりません)。
本をもらえるだけでなく、イングリッシュカンパニーの無料体験レッスンでは、本書に書かれた科学的トレーニングを体験できます。英語力アップに効果的なトレーニングがどんなものか? 気になる方は、無料体験レッスンを受けてみることをおすすめします。
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