- 理系のエンジニアが英語を身に着ける必要はあるの?
- 英語力が高いエンジニアは昇進や転職に有利?
この記事は、このような疑問を持つ人に向けて書いています。
私はメーカー勤務のエンジニアで、日常的に海外メーカーと英語で仕事をしています。国際学会の場で英語で発表した経験もあり、専門の技術的な内容に関して、英語でディスカッションをしています。
私の経験も踏まえて、理系エンジニアが英語を身に着けるメリットや、「理系が英語で仕事をする」のに必要な英語力のレベルを具体的に説明していきます。
結論を先に言うと、理系エンジニアが英語を身につけると3つのメリットがあります。
タップできる目次
英語ができる理系エンジニア3つのメリット
技術力を磨きやすい
エンジニアは技術力を磨くためには、常に最新の技術をインプットすることが重要です。そして、最新の技術情報のインプットには英語力が必要になります。
なぜなら、最新の技術情報の大半は英語で書かれているからです。
学術論文の8割は英語
たとえば、世界最大の学術論文データベースSCOPUSに登録されている論文のうち、約80%は英語で書かれています。
実際、私も英語で最新の技術情報をインプットしています。
技術開発で困ったときに調べるだけでなく、Google Alertにキーワードを登録し、定期的に関連論文がメールで送られてくるように設定しています。論文リストは週に2~3回配信されます。
すべての論文の中身を読むわけではありませんが、タイトルと要旨をざっと読みます。これらは、当然すべて英語で書かれています。
最新の業界ニュース、技術関連ニュースも英語で配信
論文だけでなく、最新の業界ニュース、技術関連のニュースは英語で配信されることが多いです。
業界の技術動向を把握するため、メルマガに登録しています。週に2~3回配信され、記事は英語で書かれています。
同僚のエンジニアの中には、技術情報のインプットに英語力は不要だという人もいます。よく聞く理由は以下の2つです。
- Google翻訳を使えばよい。Google翻訳の精度が高いため、翻訳にかければ問題なくインプットできるのでは?
- 技術論文の中で重要な情報は図表に書かれているので、本文を読む必要はない。たしかに、これらの主張には一理あります。
しかし、それでも技術情報のインプットのために英語力は必要だと考えています。
なぜなら英語力が低い人は、そもそも英語情報に触れるのを避ける傾向にあるからです。
英語ができないと、技術情報のインプットが不足する
実際、私の部署にいる英語が苦手な同僚を見ていると、技術情報のインプットの量が少なく幅も狭いと感じます。
Google Alertや海外のメルマガに登録していなかったり、仮にメールを受信しても目を通さなかったりしています。
そのため、英語ができるエンジニアは最新の技術情報をインプットする機会が増え、技術力を磨き続けることができます。
成果を出しやすい
日本企業に勤めていても海外の企業と仕事をする機会も増えています。なぜなら日本企業が海外進出を進めているからです。
その理由は、日本の市場が縮小しているので企業の成長には海外進出が必須だから。
下のグラフは日本企業の海外売り上げ比率の推移を表しています。コロナ(COVID-19)の影響で微減していますが過去20年間、一貫して海外比率が増加しています。
海外パートナー企業と仕事をするときには、英語力が必須になります。以下で詳細は説明しますが、英語でやりとりをするときに通訳はつかないからです。
そのため、英語ができると海外パートナー企業との仕事に声がかかりやすくなります。
日本企業は海外進出に本気なので、海外企業との仕事は重要な案件が多くなります。
そのため海外案件で成果を出すと社内で認められやすく、昇給や昇進にも繋がります。
では、なぜ英語でのコミュニケーションには通訳がつかないのでしょうか? 理由は2つあります。
海外企業のエンジニアは英語で仕事をしている
海外の企業は、エンジニアでも英語を使いこなす人が多いです。欧米の起業だけでなく、韓国や台湾などアジア企業のエンジニアも英語が堪能(たんのう)な方が多いです。そのため、英語のやりとりのための通訳はいません。
日本企業だけ、通訳を雇っていたらコスト競争力で負けてしまいます。
企業側の視点に立つと、通訳のために人を雇うのはコストに見合わないわけです。
通訳は技術内容に詳しくない
通訳は語学のプロですが技術のプロではありません。たとえ、事前にある程度の技術情報を伝えたとしても、細かい内容までは把握していません。
その結果、会議の場で細かい技術的な議論になると、通訳の理解が浅いために正確な翻訳ができなくなるケースがあります。
そのため、グローバル言語の英語でコミュニケーションする場合は、できるだけ通訳を介さずに議論をした方がよいのです。
このように、海外企業と仕事をするには、エンジニア自らが英語でやりとりをすることが必要になるのです。
昇進や転職などキャリアアップに有利
英語力のあるエンジニアはキャリア上、有利になります。理由は3つあります。
理由1|社内での昇進に有利
理由2|給料が高い外資系への転職のチャンスが得られる
理由3|キャリアの差別化につながる
以下で、詳しく説明します。
社内の昇進に有利
英語力のあるエンジニアは、社内で昇進しやすくなります。
理由は2つあります。
1. 社内で重要な仕事を任せられる機会が増える
近年、日本企業も海外進出が進んでおり、海外企業と一緒に仕事をする機会が増えています。なぜなら、日本企業の海外進出が進んでいるからです。国内製造企業(メーカー)の海外売上高比率は39.3%です(2018年、国際協力銀行しらべ)。
私の部署でも主要な顧客企業やサプライヤーは海外企業です。
そのため、重要な仕事をこなすには英語を使うことが必須になっています。先ほども述べたように、社内で「こいつは英語ができる」と認めてもらえると、重要顧客の仕事を任せてもらいやすくなります。
実際、私も部署内の同僚や上司に英語力があると認められ、英語でのプレゼンを任されるようになりました。その結果、重要な海外顧客の開発案件を任されました。そして、この仕事で成果を出した結果、昇進につながりました。
2. 社内の昇進基準に英語力が求められる
大手メーカーでは採用や昇進の基準の一つにTOEICの点数が求められることがあります。たとえば、日立製作所やソニーは課長クラスへの昇進時にTOEIC650点以上が求められます。
日本企業でも昇進するには英語力が求められるようになっており、この流れは加速していくでしょう。
実際、私の勤務先でも、係長以上にはTOEIC 600点以上が求められます。
TOEICの点数が基準に満たない同僚は、昇格試験を受ける際に慌ててTOEIC対策をしていました。
もとから英語力があれば、TOEIC対策をする必要がなく、昇格試験に必要な準備に時間を割くことができます。
このように、英語力があるエンジニアは社内での昇進に有利です。
3. 収入の高い外資系への転職チャンスが得られる
英語力を身に着けたエンジニアは、外資系企業への転職のチャンスが得られます。そして、外資系企業は日本企業より給料が高い傾向があります。
たとえば、次の求人票を見てみましょう。
- 外資系企業の求人:1000〜1549万円
- 日本企業の求人:500〜849万円
このように、外資系企業のエンジニアの求人は給料が1,000万円以上であることが多いです。一方、日本企業でここまで高収入の求人は少ないです。
実際、私もスカウト会社から、外資系企業の日本法人の求人を紹介されました。最終的に応募はしませんでしたが、給料は1,000万円以上なのは確実との話でした。
キャリアの差別化につながる
日本企業に英語ができるエンジニアは少ない
英語力のあるエンジニアは、キャリアで差別化しやすいです。なぜなら、英語力があるエンジニアが少ないからです。
エンジニアの多くは技術に興味があり、自分の専門分野を深堀していきます。もちろん、技術力はエンジニアの能力の根幹にかかわるので非常に重要です。
しかし、専門分野のみを深めた結果、英語に苦手意識を持つエンジニアが多い。
実際、私の部署にも100人以上のエンジニアがいますが、英語で仕事ができるレベルの英語力を持つ人は数人しかいません。
つまり、エンジニアが英語力を身に着けると、それだけで他のエンジニアと差別化しやすくなるのです。
転職市場でも英語ができるエンジニアが求められている
私が転職を検討した際に、上述のスカウト会社だけでなく、他の転職エージェント3社にも話を伺いました。
転職エージェントの全員が共通して言っていたことがあります。
英語ができるエンジニア”を求める企業は多いが、マッチする人材がいなくて困っている。
日本に拠点を構える外資系企業や、グローバルに展開する日本企業は”英語ができるエンジニア”を求めています。しかし専門力があり、かつ英語ができるエンジニアは非常に少ないとのことでした。
つまり、英語を話せるエンジニアは「需要>>供給」の関係にあるため、高い収入を得るチャンスがあるのです。
以下では、エンジニアの私が英語を身に着けて感じたメリットを体験談を交えて紹介します。
理系エンジニアが英語力を身につけて感じたメリット【体験談】
理系エンジニアの筆者がビジネス英語を身につけて感じたメリットを、体験談を交えて紹介します。
理系エンジニアに英語力は不要だと思っていた
私は国内の化学系メーカーの研究所で仕事をしているエンジニアです。もちろん同僚は日本人。
入社してしばらくは、英語を使う機会はほとんどありませんでした。英語を使う機会といえば、論文や外国特許を読むときぐらい。
Google翻訳を使えば、それほど英語力がなくても読めてしまうので、エンジニアに英語は不要なのだと思っていました。
しかし入社後しばらくしてから、海外パートナー企業と仕事をする案件が増えました。私も海外企業と協働開発をするプロジェクトを担当するようになりました。
この仕事を担当するようになってから、急に英語を使う機会が増えました。英語メールだけでなく、電話会議、プレゼン、対面での議論などです。
アメリカのベンチャー企業との会議で大失敗
7年前の秋、アメリカのベンチャー企業と一緒にプロジェクトを進めていたときのこと。ベンチャー企業の製造部門の責任者のジョン(仮名)が来日し、私たちのオフィスに来ました。
プロジェクトの重要課題の解決に向け、私たちのチームと議論するためです。
アメリカ人相手にプレゼン
ジョンは、アメリカの名門大学MIT出身の体格の良い40代後半の男性でした。これまで多くの修羅場をくぐってきたようで、振舞いから大物感のあるオーラを感じました。
ジョンとの技術ディスカッションの場に、チームメンバーとして私も呼ばれました。
ミーティングの途中で、私の担当分野に関する内容が議論の争点になりました。
私はジョンが来る前に、いろいろとデータを分析していたので、その検討結果を話そうとしました。
まったく英語が通じない......
何とか意見を伝えようとたどたどしい英語で話し始めました。
しかし、私が話している途中から、ジョンの顔がくもり始めます。
私の言っていることが、ジョンに伝わっていないのが痛いほどわかります。
「これはまずい!」と思い、別の表現で説明を試みます。
「これで伝わったかな?」とジョンの顔を見ると、さらに顔がくもっていきます。
私は、いよいよ焦って、別の表現に言い換えます。
「今度はどうだ!」と思っていると、ジョンは怒りの表情を浮かべました。
「どうしよう......」と焦りが募ります。
そんなとき、ひらめきました。「この言い方をすれば絶対に伝わる!」と。
私はすがる気持ちで、話し始めました。
おそるおそる様子をうかがうと、ジョンは鬼の形相を浮かべていました。
私の言葉をさえぎって、ジョンはこう言い放ちました。
何を言っているのかよくわからない。もっと分かりやすく説明してもらえないか。
私は頭が真っ白になりました。
そう言われても、何を口にしたら良いか分かりません。しばらくの間まるで水面近くにいる酸欠状態の金魚のように、ただ口をパクパクさせ続けていたと思います。
結局、分析結果をジョンに伝えることができぬまま、ミーティングは終わりになりました。
悔し涙を流した
しばらく経って冷静になると、猛烈(もうれつ)な悔しさが、おそってきました。
「日本語なら言いたいことはいっぱいあったのに、一つも伝えることができなかった......」。
「英語が話せないせいで、ジョンは私のことを『仕事ができない無能』と思ったに違いない......」。
この日の夜、ベッドの中でジョンのあきれ顔を思い出し、悔し涙を流しました。
一念発起して英語力を身につけた
この後、国際学会で発表する機会を得ました。理系エンジニアにとって、国際学会での発表は自分の成果を社外にアピールできるチャンスです。
ただ心配なのは質疑応答です。プレゼンは暗記すれば何とかなりますが、質疑応答はその場で相手の発言を聞き取って、すぐに英語で答えなければなりません。
「このままでは、また悔しい思いを味わうことになってしまう......」。そう思い、一念発起して英会話を身につけることにしました。
この時、プログリットという英語コーチングスクールに2ヶ月間通い、専門分野で相手と対等に議論ができる英会話力を身につけました。
⇨ご参考:プログリットのリアルな評判と口コミ|2ヵ月でビジネス英語力が伸びた体験談と感想
学会発表は大成功
英語力を磨いていたおかげで、世界中から集まるエンジニアと有意義なディスカッションをすることができました。普段議論している同僚とは、まったく別の視点で議論ができ非常に刺激的な経験でした。
このような経験は、エンジニアにとってお金で代えがたい一生記憶に残るものだと思います。
仕事で成果を出し昇進につながった
また、この学会に参加したついでに、海外の顧客企業の技術者に英語でプレゼンをする機会がありました。学会発表に加え、1週間で計5回のプレゼンをこなすのはハードなものでした。
各社に対し、異なる内容のプレゼンを行ったので英語力がなかったら、とてもこなせなかったでしょう。
このプレゼンの場でも、顧客企業の技術者と有用な議論ができました。私にとっても楽しい経験でしたし、議論の中から協働研究テーマも生まれ、会社にとっても有益なものになりました。
同席していた上司からも英語でプレゼンと議論ができることが認められました。そして、海外のある顧客企業の開発案件を任せてもらうことになりました。
この開発案件で成果を出した結果、昇進に繋がり給料も増えました。
転職市場でも価値が高まった
学会が終わってしばらくしてから、スカウト会社からメールを受け取りました。学会発表から調べて連絡してきたようでした。
お話を伺うと、外資系企業の日本法人の案件で英語が必須の職場。給料は高く、年収1,000万円以上は確実とのことでした。
先ほども紹介した通り、スカウト会社の方の話によると、技術力があり英語ができるエンジニアはほとんどおらず、候補者を探すのに非常に苦労しているとの話でした。
最終的には、いまの職場でまだやりたいことがあったため転職しませんでしたが、英語ができるエンジニアは転職市場で価値が高いのだと実感しました。
英語ができないエンジニアのデメリット【事例を紹介】
ここまで、英語ができるエンジニアのメリットを解説してきました。
反対に、英語ができないとどのような問題が起きるのでしょうか?
私が経験した事例を紹介します。
英語力のせいで、プロジェクト破綻の危機に
アメリカのベンチャー企業と共同開発をしていたときのこと。
電話会議で技術的なディスカッションをし、今後のプロジェクトの進め方を議論していました。相手も技術者で、アメリカ人が2人とインド人が1人でした。
私の部署から電話会議に参加していたメンバーは、以下の4人でした。
プロジェクトマネージャー | TOEIC 600点くらい |
私 | TOEIC 800点くらい |
メンバー2名 | TOEIC 500~600点くらい |
英語の聞き間違いで、あわや大惨事
今後の技術開発の方向性に関して議論が盛り上がってきたとき、相手が、
“It isn’t difficult to ~~”
と言ったのを、プロジェクトマネージャーは、
“It is difficult to ~~”
と聞き間違えたようでした。
プロジェクトマネージャーはポジティブな性格で、難しいことでもチャレンジして進めるべき、と考える人でした。そのため「これから技術開発をするのに、こんなことも“できない”というなんてありえない」と勘違いしたプロジェクトマネージャーは怒り出してしまいました。
怒りだすと周りが見えなくなってしまうタイプの人で、勘違いしたまま「こんな相手とは付き合えない。そんなこと言うなら、このプロジェクトはやめる!」と言い出しました。
私が勘違いに気づいて修正したので、大きな問題にはなりませんでしたが、あやうく共同開発が破談になるところでした。
コミュニケーションが取れないと専門力を活かせない
このときの経験から、せっかく技術力があってもコミュニケーションがとれないと、まともに仕事ができなくなってしまうのだとの怖さを実感しました。
つまり、英語ができないだけで、せっかくの専門力を活かせなくなってしまうリスクがあるのです。
日本企業で仕事をしていても、これからますます海外企業と仕事をする機会が増えていくと予想できます。そのときに、英語ができないだけで技術力が活きず社内でも評価されなくなってしまうのは非常にもったいないと思います。
まとめ|英語ができる理系エンジニアを目指そう
この記事では英語ができるエンジニアのメリットを詳細に解説してきました。
記事中でも紹介しましたが、エンジニアの仕事がグローバル化するに伴い、エンジニアにも英語力が求められています。しかし、英語力があるエンジニアが非常に少ないのが現状です。
そのため、技術力のあるエンジニアが英語力を身に着けると差別化でき、キャリアアップしやすくなります。
もちろんエンジニアが技術力を磨くことは重要です。しかし、他者と差別化するために、エンジニアこそ英語力を身に着けるべきだと考えています。
残念ながら「専門性があれば英語なんかいらない」というのはウソです。AIや自動翻訳が普及するのを待っている時間はありません。
専門性×英語力を掛け合わせることで、グローバルで活躍できるようになり、仕事のチャンスも増え、収入を増やすチャンスも広がります。
ぜひ英語ができるエンジニアを目指してほしいと思います。
短期間で英語力を身につけたい人はスクール活用もあり
短期間で英語力を身につけたい場合は、英語コーチングスクールを利用するのもアリです。生徒一人ひとりに専属のパーソナルコーチがついて、徹底的に学習をサポートしてくれるので、2~3ヵ月の短期間で大きく英語力を伸ばすことができます。
- 3ヶ月でTOEICスコアが300点アップ
- 3ヶ月でビジネス英会話を習得
このような成果を出している卒業生がゴロゴロいます。
以下の記事には筆者が実際に体験したおすすめのスクールを紹介しています。「ビジネス英語を身につけたい」、「初心者にオススメ」など目的別にランキング形式で比較しているので、ぜひ読んでみてください。
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