「英文を読めばわかるけど、リスニングが苦手」
「ネイティブの話が呪文に聞こえる」
筆者を含め英語リスニングに苦手意識を持つ人は多いかと思います。
日本人がリスニングに苦手意識を持つのは、学校教育で「英語の音声変化」を学んでいないから。
音声変化を身につければ、呪文のように聞こえていたネイティブの話が、聞き取れるようになります。
2020年3月にマイナビ出版から「5つの音声変化がわかれば英語はみるみる聞き取れる」が出版されました。
著者は短期集中型の英語パーソナルジムのENGLISH COMPANY(イングリッシュカンパニー) や、英語コンサルティングスクールのSTRAIL(ストレイル) を運営する株式会社スタディーハッカー。
今回筆者は、「5つの音声変化がわかれば英語はみるみる聞き取れる」の著者4名の方にインタビューをする機会をいただき、リスニング上達法や本書の効果的な読み方、など深いお話を伺いました。
英語リスニングに悩む人は必見です。
タップできる目次
「5つの音声変化がわかれば英語はみるみる聞き取れる」著者のプロフィール
今回のインタビューでは、著者の田畑さん、松井さん、亀井さん、土井さんにお話を伺いました。
言語教育情報学修士。米国留学を経て、英語教育について研究。TESOL(英語教育の国際資格)を保持。
スタディーハッカー立ち上げ時より、英語科の責任者として参画。
幼少期から英語や手話などを学び、言語に強い興味をもつ。
東京外大時代には(財)語学教育研究所に所属する第一線の英語指導者に師事。英語教育について専門的に学ぶ。
大学時代より英語環境で学び、ニューヨークの出版社でインターンを経験。
外資系メーカーを経て、TESOLを取得。海外現地企業でも勤務した。
大阪大学大学院 文学研究科 言語生態論コース修了。認知言語学、生成文法における言語研究の方法論について研究した。
教材製作・開発に携わり、中には出版されたものや、NPO法人の支援する外国語活動において用いられたものもある。
日本人が英語を聞き取れない理由
実践的な英語学習書を書きたかった
-最初に、今回の出版の背景を教えていただけますか?-
(田畑さん)以前、マイナビ出版さんから「科学的トレーニングで英語力は伸ばせる!」という書籍を出版しました。言語学の研究者である田浦教授の出版をサポートする形で出版に関わらせていただきました。
この本では、英語学習に関する理論を中心に解説しました。今回は、「実践的な英語学習書」という位置づけで本書を出版することにしました。
日本の英語教育では、リスニングの機会が限られている
-なるほど、英語学習の実践書という位置づけで出版されたのですね。英語学習には文法、単語、リーディング、スピーキングなどいろいろな分野があります。なぜ、リスニングを選ばれたのでしょうか?
(田畑さん)弊社が運営するスクール(注:ENGLISH COMPANY、STRAIL)の生徒さんを見ていて、リスニングに困っている日本人が多いと感じたからです。
「英文を読めばわかるけれど、ネイティブの話が聞き取れない」
このような悩みを持つ日本人は本当に多いです。
英語リスニングが苦手なのは学校で音声変化を習っていないから
-たしかに、私もリスニングには苦手意識を持っていました…なぜ、リスニングが苦手な日本人が多いのでしょうか?
(田畑さん)いくつか理由はあります。
ひとつには、日本語と英語は、言語的な距離がかなり遠いことです。使用している文字もまったく違えば、文法などの違いも大きい。同じように発音についても、英語には日本語にない音が多くあったり、話すときのリズムの作り方まで違ったりします。
もう1つの理由としては、学校教育ではこれまで音声による学習が軽視されてきた、ということがあります。
最近でこそ「4技能化」が叫ばれていますが、従来の学校教育の英語カリキュラムは英文を日本語に訳す「訳読」が中心となっていることが少なくありませんでした。リスニングやスピーキングといった、音声を必要とするトレーニングの機会はかなり限られていたといえます。
ただし、大人の方であればただやみくもにリスニングする量を増やすよりは、自分が具体的にどういった弱点を抱えているのかを把握して、ポイントをおさえて学習に取り組めば、かなり速いスピードで聞き取れる量は格段に増えると思います。
英語を聞き取れない3つの理由
-そうなのですね。ぜひ、英語リスニング上達のポイントを教えていただきたいです。
(土井さん)そもそも「英語が聞き取れない」3つの理由があります。
1. 単語や文法の知識が足りず、英文を理解できない
2. 英語の音声に関する知識が少なく、ネイティブが話す「音」を聞き取れない
3. 英語を聞いたそばから、頭で処理できない
-3つの原因を詳しく教えていただけますか?
単語や文法の知識が足りず、英文を理解できない
1つ目は英単語や文法の知識が足りないケースです。リスニングだけでなく、リーディングもできない人が当てはまります。
たとえば、TOEICのリスニングパートのスクリプト(原稿)を読んで理解できるか? をチェックしてみるとよいです。
聞いてわからないだけでなく、読んでもわからない場合、リスニングに特化したトレーニングの前に英単語や文法を学ぶ方が効果的です。
英語の音声に関する知識が少なく、ネイティブが話す「音」を聞き取れない
2つ目は英文を読めば理解できるが、英語を聞き取れないケースです。
実はネイティブは「教科書」通りに発音しないことが結構あります。言いやすいように「省エネ」をしているからです。
日本語でも同じですよね。「水族館」と言うとき「すいぞっかん」と発音すると思います。本来であれば「すいぞくかん」ですが、「く」が省略されて「っ」となっています。
英語も同様です。たとえば、"get it on”なら「ゲット・イット・オン」ではなく「ゲリロン」となることがあります。
このように音声が変化することを知らないと、いくら個々の単語の発音を正しくインプットしていたとしても、ネイティブが話す「音」を聞き取るのが難しくなってしまいます。
この場合は、本書で紹介する英語の「音声変化」のルールを身につけるのが効果的です。
英語を聞いたそばから、頭で処理できない
3つ目は比較的短い英文であれば理解できるのに、スピーチなどまとまった英文になると理解が追い付かなくなるケースです。
英語の音声の処理に脳のメモリの多くを使ってしまい、意味の理解に回すリソースが足りなくなる状態といえます。
このような場合は、シャドーイングなどで英語の音声の処理をスムーズにするトレーニングが効果的です。
音声変化を身につけると英語を聞き取れるようになる
英語を聞きまくればリスニング力が伸びるわけではない
-英語が聞き取れない理由と、リスニング上達のポイントが理解できました。単に英語の音声を聞きまくればよいわけではないのですね。
(田畑さん)そうですね。「留学などで外国に長期間滞在した人は、自然と英語を聞き取れるようになる。だから英語を聞きまくれば、聞き取れるようになる」という話を聞くことがありますよね。
たしかにその通りで、英語圏に住んでいる場合、意識せずとも大量に英語をインプットできます。専門用語では、ESL(English as a Second Language)環境と呼びます。ESL環境の場合、インプット量が圧倒的に多いため、自然とリスニング力も身につくことが多いのです。
しかし、日本で英語を学習する場合は状況が異なります。想像していただければわかりますが、日本で英語を学習する場合と、英語圏に住む場合では毎日触れる英語の量が圧倒的に違います。
日本のような非英語圏で英語を学ぶ環境はEFL(English as a Foreign Language)環境と呼びます。EFL環境の場合、どうしてもインプット量が不足してしまう。英語圏に住んでいる人と同じ量の英語に触れるのは現実的に不可能です。
そのため、日本に住む人が英語を学習する場合は、「とにかく大量に英語を聞く」という手段だけに頼るよりは、科学に基づく効率的な学習法を取り入れることが重要です。
「音声変化」は学習のコスパ大
-なるほど。日本に住みながら英語を学ぶ人は、英語圏に住みながら英語を学ぶ人よりも、より学習方法を意識する必要があるんですね。日本に住みながら英語を学ぶ人が、効果的にリスニング力を伸ばすにはどうすればよいのでしょうか?
(田畑さん)実際に生徒さんを見ていても効果があるのは、「音声変化」のルールを身につけることです。
音声変化というのは、単語が組み合わさって話し言葉の中で自然に話される際に、音が変化してしまう現象です。ですから、すべての単語の組み合わせについて、音声変化の仕方を個別に覚えていくのは現実的ではありません。
しかし、音声変化には一定のパターンがあり、本書では読者のみなさんにわかりやすくするため、たった5つのルールにまとめています。
これら5つのルールを身につければ応用が利くため、様々な音声変化をそのパターンにあてはめて理解できるようになります。
つまり、少しの勉強で大きな効果が得られる。5つの音声変化のルールを身につけるのは、「コスパ」のよい学習です。
実際に、ENGLISH COMPANYやSTRAILの生徒さんで、5つの音声変化のルールを身につけてリスニング力を伸ばす人は多くいます。
特に、「英文を読めば意味がわかるけれど、英語を聞き取れない」という人は、音声変化ルールを学ぶことは大きなメリットがあります。
英語の音声変化を身につけると1ヵ月で英語が聞き取れるように
-たしかにルールを5つ覚えるだけで、リスニング力が伸びるのであれば学習のコスパがよいですね。大体、どのくらい経つとリスニング力に変化が現れるのでしょうか?
(松井さん)私がENGLISH COMPANYのトレーナーとして生徒さんに教えていたときのことをお伝えしますね。
もちろん、生徒さん一人ひとりにより違いますので、「大学受験で英語を勉強してきた人」の一般的なケースということでお話します。
「音声変化」を学んで1週間くらいで、皆さん驚かれますね。「ネイティブはこのように発音していたのか」と。
2週間くらいで、自分が「英語の音を聞けていない」ということを自覚できるようになります。
そして1ヵ月くらいで代表的な音声変化を聞き取れるようになり、リスニング力に変化が見られます。
「5つの音声変化がわかれば英語はみるみる聞き取れる」の読み方
本書を読むだけでは効果がない
-1ヵ月くらいでリスニング力に変化が出るのですね。本書を読んでも、同じような効果が得られるのでしょうか?
(田畑さん)たしかに、本書を使って音声変化を身につければ同じ効果が得られます。
しかし、本書を読むだけではあまり意味がありません。なぜなら、音声変化のルールを知識として知っていても、練習をしなければ実践で使えないからです。
たとえば、音声変化のルールの一つ「連結」を覚えたとしましょう。連結とは「隣同士の単語がつながって発音される」というルールです。
たとえば、“I’ll be back in a moment.(すぐに戻ります)”とネイティブが言うとき、
2つの連結が起きます。back inと、in aです。そのためback in aは「バァキナ」のように発音されます。
仮にこのルールを知識として覚えたとしても、それだけでは実際にネイティブの話す音を聞き取るのは難しいでしょう。
実際にネイティブの音声を聴きながら、音声変化を自分でも瞬時に再現できるように発音のトレーニングをして、それで初めて楽にリスニングができるようになります。
そのため、本書を読むだけでは意味がなく、ディクテーション(音声を聞いて書き取るトレーニング)やオーバーラッピング(音声に重ねて発声するトレーニング)をすることが重要です。
スポーツと同じ|知識だけでなくトレーニングが大切
-なるほど。ルールを知るだけでなく、実際に自分でも練習してみることが重要なのですね。
(土井さん)その通りです。スポーツをイメージするとわかりやすいと思います。
たとえば、テニスの場合、ラケットの持ち方や振り方を知識として覚えるだけでは実践で役に立ちません。素振りやボールを打つ練習を繰り返す結果、スイングの感覚が掴めるようになり、実践でもうまくボールを打てるようになります。
英語リスニングも同じです。
音声変化のルールを学び、実際にトレーニングをして身体で覚えた結果、自然とネイティブの英語が聞き取れるようになります。
反対に、トレーニングをせずに知識だけ得ても、ネイティブの英語は聞き取れるようになりません。
音声変化に関する書籍は増たがトレーニングできる書籍は少ない
-よくわかりました。本書は、知識を得るだけでなくトレーニングするための教材として使うと、より効果的なのですね。
(土井さん)英語の音声変化について解説する書籍は少しずつ増えてきましたが、ディクテーションやオーバーラッピングなど、段階を踏んで効果的にトレーニングができる書籍は、まだまだ少ないです。
リスニング力を伸ばすために、単に読むだけでなく、実際にトレーニングするための教材として使っていただきたいですね。
英語の音声変化を身につけると発音もよくなる
-なるほど。音声変化を身につける他のメリットはありますか?
(土井さん)そうですね。音声変化のルールを知ることで、発音が矯正される効果もあります。
ネイティブの自然な話し言葉の発音に近づくからですね。
こちらについても、単に本を読んで知識を得るだけではなく、音声を聞きながら実際に自分で発声練習することが重要です。
英語の音声変化5つのルールとは?
-ここまでリスニング力を伸ばす3つのポイントや、音声変化の重要性などを教えていただきました。具体的に音声変化5つのルールについて教えていただけますか?
(亀井さん)わかりました。詳しくは本書を読んでいただきたいのですが、ここでは概要をご説明します。
連結
(亀井さん)最初のルールは「連結」です。単語同士がつながって発音されるケースです。
より具体的に言うと、「単語の最後が子音で終わっていて、次の単語の最初の音が母音であるときに、つながって発音される」というルールです。
たとえば、“an umbrella(傘)”の場合。anのnとumbrellaのuが連結して、「アナンブレラ」のように聞こえます。
本書のサポートサイトには、例文の音声が聞けるようになっているので、実際の音声を確かめてみて下さいね。
同化
(亀井さん)2つ目のルールは「同化」です。隣り合う音に影響を受けて、違う音に変化するケース。
本書では、/t/, /d/, /s/, /z/の音が、後ろの/j/(スペルはy)の音と混ざり合うパターンを取り上げています。
たとえば、“Nice to meet you.”の場合。Meetの/t/が、youの最初の音である/j/に影響を受けて音が変化して、「ナイストゥミーチュー」と聞こえます。
ら行化
(亀井さん)3つ目のルールは「ら行化」です。/t/や/d/が日本語の「ら行」のような音で発音されるケース。
ディズニー映画「アナと雪の女王」の主題歌をご存知ですか?
英語版のタイトルは“Let it go.”ですが、「レリゴー」と聞こえますよね。これは、Letの/t/が「ら行化」を起こしているからです。
脱落
(亀井さん)4つ目のルールは「脱落」です。あるべき音が発音されなかったり、聞こえにくくなったりするケースです。
いくつかパターンがありますが、ここでは代表的な例を紹介します。
語尾の破裂音が脱落するパターンです。破裂音とは、/p/, /t/, /k/, /b/, /d/, /g/の音を指します。
たとえば“What’s up? (調子はどう?)”。語尾の/p/は破裂音ですので脱落を起こし、「ワツ アッ」のように聞こえることがあります。
弱形
(亀井さん)最後のルールは「弱形」です。
ネイティブが話す英語にはリズムがあって、重要な意味がある単語は強く長く発音し、意味内容が軽い単語は弱く短く発音します。
学校教育ではふつう「強形」の発音しか習いません。たとえば“him”は「ヒム」と習いますが、これは「強形」の発音です。
一方、“call him”の場合、“him”は「弱形」で発音されます。“him”の「弱形」は「ィム」のように発音されます。さらにcallの/l/と連結し、「コーリム」のように発音します。
-5つの音声変化のルールを教えていただき、ありがとうございました。ネイティブがどのように発音しているのか、わかってきた気がします。
(亀井さん)繰り返しになりますが、音声変化を知識として知っただけではリスニング力は伸びません。意識せずに音声変化を発声できるように実際にトレーニングをしてみて下さいね。
まとめ|「英語音声変化5つのルール」はリスニングに悩む日本人への処方箋
「5つの音声変化がわかれば英語はみるみる聞き取れる」の著者にインタビューをして、リスニング力アップのために「音声変化」を身につける重要性を教えていただきました。
インタビューのポイントをまとめておきます。
- リスニング力アップには、英語が聞き取れない3つの原因を知り、最適なトレーニングをする
- 「英文を読めばわかるが聞くと分からない」は日本人に多い症状
- この症状には、「英語の音声変化5つのルール」を身につけることが処方箋
- 「音声変化」の知識だけ得てもリスニング力は伸びない。
- 自分で発声するトレーニングを繰り返すことが重要。
ぜひ、本書を使ってトレーニングをして、英語の音声変化5つのルールを身につけて下さい。これまで、呪文にしか聞こえなかったネイティブの英語が聞き取れるようになるはずです。
もし、一人でトレーニングするのは難しい…と感じる方は、ENGLISH COMPANYやSTRAILのスクールを検討してみるのもよい選択です。
オンライン完結で受講可能ですし、無料体験も受けられます。
プロに学習のサポートをしてもらいたいな…という方は無料体験を受けてみることをおすすめします。
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