- 英語を学んでいるが、文法を覚えるのが苦痛
- 英語を読んだり聞いたりは何とかなるけれど、読んだり書いたりは自信がない…
こんな方には、“英語職人”と呼ばれる時吉秀弥氏の「英文法の鬼100則」がおすすめ。
出版直後から、増版が決まる人気ぶりでAmazonの「英文法」ランキング第1位(2019/12/18)。
21件のカスタマーレビューは4.8点(5点満点)という人気ぶり。
「英語の視点、日本語の視点が解説されているため、英語を学ぶマインドが身についた。このような本が学校のテキストであったら、どんなによかったことか...」
「無味乾燥に見える文法には、人間の活き活きとした情感が隠れていることを教えてくれる本です」
「もっと早くこの本に出合っていたら・・・と思える素晴らしい一冊」
口コミでも「これまでの英語テキストと全く違いわかりやすい」と評判です。
今回、筆者は「英文法の鬼100則」の出版記念セミナーに参加してきました。
セミナーのタイトルは「からだで覚える英文法セミナー」。
実際に参加しての感想ですが、知的好奇心を刺激され、期待以上に面白い。
「英語ネイティブと日本人のものの見方の違い、感覚の違いが文法などの言葉に表れている」ことがよく分かりました。もっと早く知っていれば、英語学習をスムーズに進められただろうに…という内容。
この記事では、筆者が実際にセミナーで学んだ内容を踏まえて、以下について説明します。
- 「英語脳」とは? 日本語はカメラの世界、英語はもう一人の自分が見る世界
- なぜ、今さら文法書を書いたのか?
- WillとBe going toの感覚の違い
- 動詞を制するものは英語を制する
- 本当は面白い「可算名詞」「不可算名詞」の話
タップできる目次
時吉秀弥氏「からだで覚える英文法セミナー」の概要
講師プロフィール
時吉 秀弥(ときよし ひでや)
株式会社スタディハッカーコンテンツ開発室シニアリサーチャー。神戸市外国語大学英米語学科卒。
ルイジアナ州チューレン大学で国際政治を学んだ後、帰国。落語家の弟子、コント芸人、ラジオパーソナリティという特殊な経歴を経つつ、同時に予備校で英語も教えてきた。
独自の英文法観を築きつつあった頃、それが認知言語学に通じるものだと知り、東京言語研究所に入所、池上嘉彦東京大学名誉教授、西村義樹東京大学准教授(当時・現教授)、尾上圭介東京大学教授(当時・現名誉教授)らのもとで認知言語学、日本語文法などを学ぶ。2010年、同所で理論言語学賞を受賞。
舞台やラジオで実践的に培った「人に話を聞いてもらうとはどういうことか」の追求と、認知言語学の知見を融合させ、日本人が「人を説得できる」英語を話すための方法論を開発する日々を送る。
“英語職人”とも呼ばれ、「時吉秀弥の英文法最終回答」というブログも執筆されています。
「英文法の鬼100則」出版記念セミナー
時吉秀弥氏が出版した「英文法の鬼100則」の出版記念セミナーです。
時吉先生がシニアリサーチャーとしてコンテンツ開発をしている、English Companyの運営会社「スタディハッカー」が主催。
会場はTKP渋谷、参加者は50人くらい。
出版された本の内容を交えながら、英文法の面白さを語る濃密な二時間でした。
なぜ、時吉秀弥先生は今さら英文法書を書いたのか?
英文法書は必ずしも売れる本のジャンルではありません。
実際、いくつかの出版社には、「英文法書は売れないからやめた方がよい」と言われたとか。
それでも、時吉先生が英文法書の出版にこだわったのはなぜなのでしょうか?
理由は3つあります。
理由1|何事も正しい「型」を繰り返すから、上達できる
理由2|英語を「使える」ようになるには、英文法が必須
理由3|英語の「世界観」がわかると英文法は面白い
正しい「型」を繰り返すから、上達できる
時吉先生が学生時代、友人とスキーに行ったことがあるそうです。
時吉先生はスポーツマンのため、最初からなんとなく滑ることができました。友人は全く滑れず転んでばかり。
友人は自己練習をあきらめてスキースクールに通うことにしましたが、時吉先生は自己練習で滑っていました。
数日後、友人と一緒に滑ったときに、時吉先生は驚きました。
スクールで、スキーの「型」を習った友人は、あっという間に上達し、時吉先生を追い抜いてしまったからです。
この時の経験から、正しい「型」が重要だと悟ったそうです。
英文法というのは、英語を正しく伝えるための「型」。
この「型」を身につけ、無意識に口が動くようになるまで繰り返し練習することで、その後の英語力の伸びが大きく変わってきます。
何事も「型」が大事だからこそ、英文法の本の出版こだわりました。
英語を「使える」ようになるには、文法が必須|脳の仕組みから考える
2つ目の理由は、脳の仕組みにあります。
実は、英語を理解するときと、使うときで、脳の別の位置が使われます。
英語を理解するときは、ウェルニッケ野と呼ばれる領域が活性化します。
一方で、英語を使うときは、ブローカー野と呼ばれる部位。
ブローカー野は運動をするときや、道具を作るときにも使われます。
そして、道具を作るときに大事なのは「手順」と「予測能力」。どのような手順を加えると、どのような道具になるかを想像することが必要だからです。
「ことば」も一種の道具です。言葉を扱う上での「手順」に相当するのが「文法」です。
つまり、脳の仕組みから考えても、英語を話したり書いたりするのに、文法が重要なのです。
世界観の違いがわかると文法は面白い
3つ目の理由は、日本語と英語の世界観の違いがわかると、文法は面白いからです。
次の章で詳細に解説しますが、日本語と英語の「世界の見方」の違いが文法に表れています。
このように捉えると、英文法は単なる暗記ではなく、意味のあるものと感じられるはずです。
学校教育では習わない、文法の面白さを伝えたくて、英文法の本を書くことにしたそうです。
時吉秀弥氏が考える「英語脳」とは?
巷で「英語脳」というキーワードを聞くことあります。
セミナーでは、時吉先生が考える「英語脳」について、言語学の視点で解説されていました。
言語には世界の捉え方が表れる|認知言語学の世界
言語学には大きく二種類の流派があります。「生成文法」と「認知言語学」です。
「生成文法」は、言語の普遍性に目を向ける考え方です。
一方、「認知言語学」は、言語や文化には人間の世界の捉え方が表れているとする考え方。
この認知言語学の視点で、英語を勉強すると非常に面白く分かりやすいのです。
以下で、セミナーでの解説をもとに、具体的に「認知言語学」の視点で見た、英語と日本語の違いを紹介します。
日本語はカメラの世界、英語は外からもう一人の自分が見る世界
日本語と英語では、世の中を見る視点が違います。
日本語はカメラの世界。見ている世界に「自分」は存在しません。
見ているものを描写するだけ。だから、よく主語が省略されるのです。
一方、英語は外からもう一人の自分が、自分を眺める世界。
この違いが表現にも表れます。
「ここはどこ?」は”Where am I ?”
日本人の感覚だと、「ここはどこ?」は”Where is here?” となります。
なぜなら、自分の視点で、どこにいるかが分からないことを表現するから。
一方で、英語の感覚では、”Where am I ?” となります。
地図を空から見ている感覚です。
日本人に分かりづらい”find”の感覚
「これは難しい」というとき、英語ネイティブは、
“I find it difficult to ~~.” と表現します。
この”find”は日本人が理解するのは難しい。
なぜなら、「難しいと感じる自分を外から見る」との感覚が日本語にはないからです。
これも、「もう一人の自分が外から見る」英語の世界の見方を反映しています。
「私が驚く」日本語と、「ある原因が、私を驚かせる」英語
「驚く」の表現も、日本語と英語で違います。
日本語は、「私が驚く」。カメラが捉える世界です。
英語では、「ある原因が、私を驚かせる」という感覚。もう一人の自分が外から眺めています。
このように、同じ「驚く」でも日本語と英語で感覚が違ってきます。
再帰動詞はガンダムの世界
再帰動詞と呼ばれるものがあります。”myself”, “yourself”などと一緒に使われる動詞です。
たとえば以下の文章。
“I hurt myself”
(私は自分自身で傷をつけた)
Iとmyselfはどちらも同じ「私」を指します。
この再帰動詞はガンダムの世界の感覚です。
どういうことかというと、「自分の魂が、自分の身体を操縦している感覚」です。
たとえば、”I dressed myself up.” という文章。「自分で着飾った」という意味。
「私が自分という身体を操縦して、着飾った」という感覚です。
時吉先生は、これを「ガンダムの世界」と呼んでいました。
「庭」の作り方にも、世界観が表れる
この世界観の違いは、「庭」の作り方にも表れています。
日本の庭園は「回遊式庭園」と呼ばれ、人が庭園の中に入り込み、歩き回ることを前提に設計されています。
一方で西洋の庭園は、展望台など外から見渡す前提で設計されています。
このように、日本と西洋の世界観の違いは、言葉だけでなく文化にも表れています。
「英語脳」とは英語の世界観が感覚でわかること
ここまで、認知言語学の考え方をもとに、日本語と英語の世界観の違いを解説してきました。
時吉先生が考える「英語脳」とは、英語の世界観を無意識に使えるようになること。
つまり、英語ネイティブの感覚で世の中を見て、言葉で表現できるようになることです。
WillとBe going toの違いは?【時制】
”Will”は未来系ではない。「心の動き」を表す言葉
学生時代、”will”は未来系と習いました。しかし、”will”の本質は未来ではありません。
「心がパタンと傾く」感覚が根っこにあります。
“I will go to the library.”
図書館に行こうかどうしようかと思っていたけど、心がパタンと傾いていくことにした、というニュアンス。
“It will rain tomorrow.”
「明日は雨だろう」と思っているだけ。それほど可能性は高くありません。
まとめると、”will”は「思っているだけ」のことを表すときに使います。
”Be going to”は進行中
一方、”be going to”は進行中のことを表します。
進行中とは、始まりと終わりがありその間、という意味。Willよりも確度が高い感覚です。
“I’m going to have a party.”
終わり:パーティーをする未来
今はその途中
という感じです。パーティーに向けて、粛々と準備を進めているイメージです。
“I will have a party.”
の場合は、心がパタンと傾いて「パーティーをすることにした」という意味合いで、これから準備をするニュアンスです。
英語表現に純粋な置き換えは存在しない
学校教育では、”will” = “be going to”と習いましたが、英語表現に純粋な置き換えは存在しません。
ことばの感覚を身につけると、英語ネイティブが話したり書いたりするときに見ている世界を想像できるようになります。
このように、英語ネイティブの「時制」の感覚が身につくと表現に迷わなくなります。
動詞が分かると、英語を話し、書けるようになる【感覚で理解】
英語を「使える」とは、英語を話せ、書けること。
このときに重要なのは「名詞」ではく「動詞」です。
初心者は名詞をつなぎ合わせれば意味が通じると考えることがありますが、これは間違いです。
なぜなら英語の文章の心臓部が動詞だからです。
動詞は英語の「木」、名詞は「実」
時吉先生の言葉を借りると、動詞は英語の「木」です。そして、名詞は「実」。
動詞という「木」が決まれば、あとはどの枝に名詞という「実」をつければよいかは自動的に決まります。
反対に、動詞が決まらないと、骨格が定まらないので文章は作れません。
「動詞」を理解する上で最も重要なのが、自動詞と他動詞の違いです。
たとえば、以下の2つの文章に違いがあるのは、感覚で理解できるのではないでしょうか。
- 皿が割れた(自動詞)
- 皿を割った(他動詞)
両者は、かかる力の方向が違うので、身体を使って覚えると理解しやすい。
以下で詳しく説明します。
自動詞は、力が戻ってくるイメージ
「皿が割れた」は、自動詞を使っています。
そして、自動詞は力が自分に戻ってくるイメージ。
セミナーでは、両腕を身体の前に持ってきて、ぐるぐる回す演習をしました。
自動詞の力が、自分に戻ってくる感覚をつかむためです。
他動詞は他者に力をぶつけるイメージ
一方、「皿を割った」は他動詞を使っています。
他動詞は他者に力をぶつけるイメージです。
「私」が、「皿を」割ったのです。
セミナーでは、右手で左手をパチンとたたく演習をしました。
他動詞が、他者に力をぶつけるイメージを理解するためです。
英文を音読しながら、自動詞の箇所は腕をぐるぐる回し、他動詞が出てくるときはパチンとやる練習を繰り返すと、動詞の感覚が身についていくとのこと。
セミナー中で実際に練習をしましたが、頭で考えるだけでなく、身体を使うと理解が深まる気がしました。
本当は面白い「可算名詞」「不可算名詞」の話
日本人にはわかりづらい「数えられる」感覚
「可算名詞」「不可算名詞」という言葉を聞いたことはありますか?
一般的には、数えられるものは可算名詞、数えられないものは不可算名詞と言われます。
しかし、日本人にとって「数えられるか、数えられないか」との感覚は理解しづらいです。
なぜなら、「数えられる」というのはインド・ヨーロッパ言語に特有のもので、日本を含むアジア人はこの感覚を持っていないから。
しかし、英語ネイティブがどのように「数えられる」と認知しているかを知ると、彼らの感覚が理解できるようになります。
「形」で認識するか、「性質」で認識するか、それが問題だ
そもそも、英語ネイティブは「数えられる・数えられない」をモノの属性で区別していません。
その代わり、対象となるモノの認知の仕方で区別をしています。
私たち人間は、モノを認知するときに2つの認識の仕方があります。
「形」で認識する、「性質」で認識する、の違いです。
たとえば、以下のものがあったとします。
② ガラスでできたTの字
③ おがくずでできたTの字
④ おがくずでできた〇の字
「形」で認識するときは①、②、③が同じモノだと理解します。
一方で、「性質」で認識するときは③、④が同じモノだと理解します。
このように、人間のモノの認知の仕方には、「形」と「性質」の2つの方法があります。
そして、英語ネイティブは「形」と「性質」の認知の仕方の違いで、数えられる・数えられないを区別しています。
「形」で認識するものは、可算名詞(数えられる)
形で認識するものは、可算名詞で表します。
たとえば机、スマホ、パソコンなど。
仮にスマホを分解しバラバラにしてしまったら、もはやスマホとは呼べなくなってしまいます。「形」が変わってしまうからです。
パソコンも同様です。
このように、分解したら別物になってしまうと認識するものは可算名詞となります。
「性質」で認識するものは不可算名詞(数えられない)
反対に「性質」で認識するものは不可算名詞です。
たとえばパン、ピザ、チョークなど。
小さくちぎっても、パンはパンです。
同じように、チョークを半分に割ってもチョークです。
これは、私たちがパンやチョークを「形」ではなく「性質」で認識しているから。
このように、バラバラにしてもモノが変わらないと認識するものは不可算名詞です。
”a”を侮るなかれ! こんなに意味が違う
ここで面白いのは、同じ単語でも可算名詞になったり、不可算名詞になったりすることです。
そして、ネイティブは両者を感覚で区別しています。
たとえば、魚を表す”fish”。可算名詞にも、不可算名詞にもなります。
“a fish” (可算名詞)の場合、泳いでいる魚、あるいは尾頭付きの魚をイメージします。「形」で認識しているからです。
“some fish” (不可算名詞)の場合、切り身の魚を想像します。いくら切っても切り身は切り身、「性質」で認識しています。
このように、”a”をつけるか否かで、想像する姿が変わってきます。
学校で習ったように、「数えられる・数えらえない」と覚えるのではなく、ネイティブが持っている感覚をイメージできると英文法を楽しいと感じられるはずです。
まとめ|驚きの英文法の世界
この記事では、時吉秀弥先生の「からだで覚える英文法セミナー」の内容を紹介してきました。
正直、参加前は「今さら、英文法なんて面白くなさそうだな」と思っていました。
しかし、実際にセミナーに参加すると、「そうだったのか!」という話ばかりで、英語に対する理解が深まりました。
それだけでなく、「英文法」は丸暗記する無味乾燥なものではなく、「世界の見方」を表す血が通ったものです。
時吉先生がサインに添えて書いてくださったように、「英文法で彼ら(英語ネイティブ)の『心』を覗く」ことができると分かりました。
より深く知りたい方は、「英文法の鬼100則 」を読んでみると発見があるかと思います。
また、時吉先生がコンテンツ開発に携わっている英語コーチングスクール”イングリッシュカンパニー”と“STRAIL(ストレイル)"では、認知言語学を使った学習ができます。
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