英語の音読は、初心者から上級者まで、ぜひ取り入れるべき学習法です。
しかし、声を出すのが面倒で、単語の暗記や英会話の練習などに比べ、後回しにしている人も多いのではないでしょうか?
この記事では、
- 音読には具体的にどんな効果があるのか
- どうやれば効果が高まるのか
などを解説します。
書いてあることを実践すれば、音読の効果を最大限にして、効率的に英語力をアップさせることができますよ。
英語音読の3つの効果
音読は目、口、耳を同時に使うトレーニングで、さまざまな技能の向上に効果があります。
中でも高い効果が期待できるのは、リーディング力、リスニング力、スピーキング力の3つです。
リーディング力が伸びる
音読を行うことによって、単語や文章を速く正確に理解できるようになり、リーディング力が伸びます。
この点については、京都教育大学名誉教授の鈴木寿一先生が次のように解説しています。
文章を黙読して理解するまでには、眼球による文字知覚後、
①その文字の塊(単語)を長期記憶内のスペリング情報と照合し、その単語が検索され、
②単語を頭の中で発音(音韻符号化)する、
③その単語の意味を想起する、という順序で単語認知が行われます。
〈中略〉
文章理解には①~③の処理が高速に行われることが不可欠で、音読はそれを可能にします。音読によって、スペリングと発音の結びつきを強化するとともに、学習した語彙や文法などを内在化でき、また、ワーキングメモリーも鍛えることができます。
(引用元:「英語教育」2009年11月号)
簡単に言うと、音読によって頭の中で「文字・発音・意味」を結びつけるスピードが上がり、結果として文章理解が速くなるということです。
リスニング力が伸びる
英文を黙読するだけなら、発音を無視しても問題ありません。
しかし音読をするとなったら、発音やアクセント、イントネーションを意識しますよね。
英語ならではの読み方を意識し、それに慣れることによって、リスニングがとても楽になります。
たとえば「apple」の読み方を「アップル」とカタカナ読みで覚えていた場合、ネイティブが正しく「アポー」と発音した時に聞き取ることができません。
リスニング力を上げるためには、正しい発音の理解がとても大切なのです。
音読をすれば、頭の中で音声と文字が一致していくので、聞き取りの問題が解消されます。
スピーキング力が伸びる
私は音読を長年続けてきましたが、最も実感しているのはスピーキング力の向上です。
音読によって、正しい発音を学べただけでなく、口周りの筋肉や舌が鍛えられました。
日本語は口をあまり開かなくても喋れますが、英語は口を大きく動かさないと通じづらい言語です。
日常的な音読で口が動かしやすくなったので、英語の話し方が改善され、ネイティブにも「発音がきれいですね」とほめられるようになりました。
英語音読3つのメリット
他の英語学習法と比べ、音読には次のメリットがあります。
教材の自由度が高い
音読に使う教材は基本的に何でもOKです。
もちろんトレーニング用の書籍を用意してもいいですし、お金をかけなくても、インターネット上には英文があふれています。
また、英字新聞やニュースサイト、英語の絵本や小説、海外ドラマのスクリプトなど、自由に選んで構いません。
モチベーションを保つためにも、自分が好きなジャンルの英文を教材にするのがおすすめです。
音読におすすめの教材を後ほど紹介しますね。
成長を実感しやすい
独学をしていて「本当に実力がついているのかな?」と心配になることはないでしょうか。
そんな時はぜひ音読を取り入れてみてください。
- 最初は何度もつっかえていたけれど、スムーズに読めるようになった
- 通して読むのに3分かかっていた文章が2分で読めるようになった
など、音読は比較的成長を実感しやすいトレーニングなので、継続することで自信がつきます。
ストレス発散になる
声を出すことでストレス発散になるので、私は仕事で疲れた時やアイディアが出ない時に、進んで音読をするようにしています。
デスクワークの気分転換にもなるので、声を出せる場所さえあれば、休憩時間に行うのもおすすめです。
単語の暗記や文法演習などは頭を使いますから、合間に音読を挟んで変化をつけると、集中力を長引かせることもできますよ。
英語音読の正しいやり方
音読は誰でも簡単にできますが、最大限の効果を得るためには、正しいやり方を把握しておくことが大切です。
お手本の音声を聞く
自分で音読する前に、お手本となる音声を聞きましょう。
正しく読むためには、はじめに「目指すべき読み方」を頭に入れておく必要があるからです。
この工程を省くと、間違った発音のままトレーニングを積んでしまうおそれがあります。
正しい発音と意味を理解する
音声とスクリプトを比べながら、正しい発音と意味を理解していきます。
音声を聞いて発音がよくわからなかった部分は、繰り返し聞いたり発音記号を調べたりして、聞き取れるまで確認しましょう。
また、英文の意味がわからないと気になって音読に集中できないので、知らない単語や熟語はあらかじめ調べておきます。
繰り返し音読する
ここまで準備ができたら、あとは繰り返し音読をすればOKです。
口をしっかり開け、大きめの声でしっかり読みましょう。
間違ったまま繰り返すと効果が薄れてしまうので、自信が持てない部分は適当に読まず、お手本の音声を再度確認してください。
音読の注意点と気をつけるべき3つのポイント
次の3つのポイントに気をつけることで、音読の本来の効果を引き出すことができます。
お手本を忠実にまねる
間違った読み方のまま音読をしても、リスニング力やスピーキング力は改善されません。
音読を行う際は、自己流で読むのではなく、お手本となる音声を忠実にまねることが重要です。
発音、アクセント、イントネーションをよく聞き、モノマネのつもりで繰り返しましょう。
長い英文の場合、1文ずつに区切って練習し、自信がついてきたら分量を増やしていくのがおすすめです。
スピードより正確さを優先する
お手本と同じスピードで読もうとして、細かい部分を適当に発音しないよう注意してください。
最初はゆっくりでいいので、正確に読むことのほうが大切です。
そもそも「お手本が速すぎて、細かい部分が聞き取れない」という時は、再生速度を調整するか、少しレベルを落とした教材に変更します。
正確に読めるようになったら、少しずつスピードアップしていきましょう。
自分の発音を確認する
自分では正確に読んでいるつもりでも、実はお手本と異なっている......というケースはよくあります。
自分で気づくのは難しいので、信頼できる人に聞いてもらってフィードバックを受けるなど、定期的に発音を確認することが必要です。
頼める人がいない場合は、ボイスレコーダーやスマホで自分の声を録音し、客観的に聞いてみましょう。
お手本と自分の音読を聞き比べ、違う部分に気をつけながら再度音読をし、少しずつ修正していけばOKです。
この一手間が非常に重要で、発音確認を怠ると、「せっかく音読を頑張ったのに成果が出なかった」となってしまいかねません。
「めんどくさいな......」と思うかもしれませんが、ぜひ試してみてくださいね。
音読におすすめの教材
音読の教材は自由度が高いため、「どれを選べばいいかわからない」と迷ってしまうこともあります。
そんな時は、これから紹介する教材から始めてみるのがおすすめです。
『感動スピーチで英語「速」音読』
せっかく何度も読むなら、役に立つ内容の英文を使いたいと思いませんか?
本書は各界の著名人による名スピーチを題材にしており、読んでいるだけでも勉強になります。
スピーチ慣れしている人たちの音声なので、人の心に響く話し方も学べますよ。
ナレーターがゆっくり読み上げる音声も収録されているので、自分のレベルに合わせてトレーニングに使いましょう。
POLYGLOTS レシピー
スマホアプリを利用すれば、いつでもどこでも学習できます。
中でも英語の最新ニュースを教材とした「レシピー」は、ネイティブの読み上げ音声を速度調整したり、タップするだけで単語の意味を確認できたりと、機
能が充実しており音読トレーニングに最適です。
スクリーンプレイ・シリーズ
スクリーンプレイ・シリーズは、洋画の台本(セリフとト書き)が日英バイリンガルで表記された書籍です。
映画を教材にすると、日常的な会話表現を自然に覚えらます。
さらに、登場人物に感情移入しやすいため、「お手本を忠実にまねる」というポイントを実践しやすいというメリットも。
『ローマの休日』や『英国王のスピーチ』といった名作映画がそろっているので、好きなジャンルの作品で楽しくトレーニングができますよ。
よくある質問
最後に、音読についてよくある質問をまとめました。
音読の効果が出るまで、どのくらいの期間がかかりますか
「ひとつの英文をうまく読めるようになる」ということが目標であれば、1日30分の音読を2〜3日続けるだけで上達を感じられます。
ただし、リーディング力やリスニング力の伸びなど、いわゆる「英語力」が底上げされるまでには、最低1ヶ月は必要です。
というのも、脳内で記憶が整理されるまでには1ヶ月程度かかるとされているから。
その間に復習を繰り返すことでやっと身につくため、どんなことでも1ヶ月は続ける必要があります。
音読の効果を示した論文はあるのでしょうか?
「英語リーディングにおける音読の効果-脳科学的解明より-」や「日本人大学生に対する音読指導が英語読解能力向上に与える効果」など、音読については多くの論文が出ており、CiNiiやJ-STAGEで検索することができます。
また、音読の科学的効果については、関西学院大学法学部教授・門田修平先生が『音読で外国語が話せるようになる科学 科学的に正しい音読トレーニングの理論と実践』で詳しく解説しています。
音読の効果について根拠を知ることができるので、モチベーションを上げたい方はぜひ読んでみてください。
音読をやると、つっかえてしまいます。何か良い対処法はありますか?
最初はスムーズに読めなくて当たり前なので、あまり気にしなくて大丈夫です。
お手本や辞書で発音を確認してから、1文ずつゆっくりと読むことを繰り返しましょう。
1文が長い場合は、カンマなど途中で区切って練習しても構いません。
何度も繰り返していれば、そのうち口が動きを覚えて、つっかえずに読めるようになります。
まとめ
音読は一人でできますし、特別な教材も必要ないので、気軽にチャレンジできます。
誰でも簡単に取り入れられるトレーニングなので、今すぐにでもやってみてくださいね。
正しいやり方で音読を行えば、必ず英語力が伸びます。
コツコツ続ければ、「英語を使う仕事をしたい」「洋書をスラスラ読めるようになりたい」といった目標に近づくことができるので、ぜひ頑張りましょう。
---
音読に取り組んで「慣れてきたかな」と感じるようになったら、次はシャドーイングにチャレンジしてみてください。
少し難易度が高いですが、「最強の英語トレーニング法」と言われるくらい効果のあるトレーニングです。以下の記事にやり方を解説していますので、参考にしてみてくださいね。
⇨ご参考:
https://ushikubou.com/english-shadowing