第二言語習得における言語転移とは?日本人が”l”と”r”を聞き取れない理由

よく、日本人は”l”と”r”を聞き取れないと言われます。

 

この原因は「言語転移」と呼ばれます。言語転移とは、第二言語(英語)を学習する際に、母語(日本語)の影響を受ける現象です。

 

日本語は”l”と”r”を区別しません。たとえば”right(右)”と”light(明かり、信号機)”のどちらも「ライト」と発声します。そのため、英語の"l"と"r"を聞き取れなかったり、発音できなかったりします。

 

英語学習をする際、“l“と”r”以外にも日本語の影響により覚えるのが難しい発音や表現があります。

 

「どうしても覚えられない英語表現がある」
「よく英語を間違えてしまう」

という方に、この記事の内容がヒントになります。

言語転移とは?

第二言語習得における母語の影響

言語転移とは第二言語習得における母語の影響を意味します。

母語の発音、文法、単語、文化などの知識が、第二言語に影響を及ぼす現象です。つまり、英語を学習しているとき、日本語の影響を受けるということです。

日本人の発音が「カタカナ英語」と言われることがありますよね? これは、日本語の発音が英語に転移した状態です。

スポーツでも転移は起きる

「転移」は言語習得に限った話ではありません。スポーツでも転移はよく起きます。

たとえば、長年テニスをやってきた人が野球をやるとき。テニスをやってきた人は、何もスポーツをしてこなかった人と比べて鋭いスイングができますが、いわゆる「テニス打ち」と呼ばれるスイングになりがちです。

 

これはテニスが野球に「転移」した状態です。

つまり言語習得に限らず、無意識のスキルとして身につけた動作が、新しいスキルを身につける際に出てくる現象を「転移」と呼びます。

正の転移と負の転移

転移には「正の転移」と「負の転移」があります。

正の転移

正の転移とは、第二言語習得に母語がプラスに働くケースです。たとえば、日本語と英語の過去形は似た文法です。日本語では「~~た。」と表すことが多く、英語では、「~~ed.」などの過去形で表現します。

日本語をそのまま英語に置き換えれば成り立つ状況では、「正の言語転移が起きる」と言われます。

負の転移

反対に、負の転移は母語がマイナスに働くケースです。

英語の音には、日本語にない音が含まれます。たとえば、”v”の音は日本語にはありません。そのため”over”「オーバー」”b”で発音します。

日本語の発音が英語に転移する事例です。

正の転移と負の転移は偶然

ここで注意が必要なのは、「正の転移」と」負の転移」は偶然の産物だということです。たまたま、第二言語習得にポジティブに働くものを「正の転移」と呼び、ネガティブに働くものを「負の転移」と呼ぶだけです。

どちらも母語の影響を受けるという意味で、本質的には同じ現象です。

言語転移と言語間の距離の関係

転移が「正の転移になるか」、「負の転移になるか」は、言語間の距離が関係しています。

言語間の距離とは?

言語間の距離とは、2つの言語がどれくらい似ているか? を表すものです。言語間の距離が近ければ習得しやすく、遠ければ習得しづらいです。

英語と日本語の言語間距離はどの程度なのでしょうか?

アメリカの外交官を育成するFSI(Foreign Service Institute)という機関が過去70年間の教育経験を元に、アメリカ人が外国語を習得する難易度と必要となる学習時間をまとめた結果が参考になります。

 

カテゴリー言語習得にかかる時間
カテゴリーⅠイタリア語、デンマーク語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、など600~700時間
カテゴリーⅡドイツ語、インドネシア語、スワヒリ語、マレーシア語、など900時間
カテゴリーⅢクロアチア語、チェコ語、フィンランド語*、ロシア語、ベトナム語* など1100時間
カテゴリーⅣアラビア語、中国語、韓国語、日本語*2200時間

*マークは同じカテゴリーの中で、他の言語より習得が難しい。

 

この表からわかるようにに英語ネイティブにとって日本語は最も習得しづらい言語です。反対に、日本人にとって英語は習得しづらい言語といえます。つまり、日本語と英語は言語間の距離が遠いということです。

言語間の距離が近い場合、母語の直訳でOK

言語間の距離が近い場合、母語の直訳で意味がなりたちます。たとえば、スペイン語と英語は言語間の距離が近いので、基本的にはスペイン語の直訳でOKです。

ただし言語間の距離が近い場合、ミスが治りづらいとも言われています。母語の思考で英語を使えてしまうので、わざわざミスを治すモチベーションが働きづらいからです。実際、アルファベットを用いる言語の人は、英語のスペルミスが治りづらい傾向にあります。

日本語と英語の負の言語転移~日本人が”l”と”r”を間違える理由

先ほど見たように、日本語と英語は言語間の距離が遠いです。そのため、様々な場面で「負の転移」が起きます。

発音の転移

よく知られているように、日本語では”l””r”の音を区別しません。そのため、日本人は”l”と”r”を発音したり、聞き分けたりするのが苦手です。

たとえば日本人にとって”right(右)””light(信号機、明かり)”はどちらも「ライト」です。そのため、”right”と”light”区別することが困難です。これは日本語による「負の転移」の一種です。

文法の転移

日本語と英語の文法の違いの影響を受けることもあります。

 

たとえば、「彼が来たら、話すよ。」をどのように英訳しますか?

次のように訳す日本人が多いようです。

“When he came back, I’ll talk to you.”

 

未来の話なので、”came”ではなく”comes”が正しく、次の表現が正解です。

“When he comes back, I’ll talk to you.”

 

ですが、「彼が来たら」“た”に影響され、過去形を使ってしまう人が多いようです。英語上級者でも、この間違いを犯してしまうことがあります。

文化の転移

ここまでは発音や文法など、単純な言葉の転移について説明してきましたが、文化が転移することもあります。

日本人は謙遜する文化で、ほめられたときは、いったん否定するのが普通です。「いえいえ、そんなことありませんよ」というように。

しかし、この様子はアメリカ人からすると奇妙に映ります。アメリカ人であれば、謙遜をせずに”Thank you.”や”Thanks.”などお礼を述べます。

 

反対に日本にいる外国人が、日本人から「日本語お上手ですね」とほめられたときに謙遜を示さないと、どうなるか想像してみてください。なんとなく違和感を覚え、「偉そうだ」と思う人もいるのではないでしょうか。

 

このように、文化も転移を起こします。そして、言語の転移より文化の転移の方が、実はやっかいです。

なぜなら、発音や文法がおかしい外国人に対しては、「まだ初心者なのかな?」と寛容な気持ちになるからです。そして相手にわかりやすく伝えようとしたり、相手の言うことを理解しようと努力したりします。

 

一方、文化の違いはそうはいきません。外国人を褒めたときに、相手が「当然!」という反応をしたらどう感じるでしょうか。文化の違いがあるのを頭では理解していても、「嫌な奴だ」と思う人もいるかもしれません。そして、文化の転移は指摘してくれる人が少ないので、本人はなかなか気づくことができません。

 

ですので、文化ギャップがあるのを前提にコミュニケーションを取ることをオススメします。

 

以下の記事では、文化の転移を自覚して対処するのに必要な「異文化理解」について詳しく解説しています。これからの時代、「英語がペラペラな人」よりも「異文化理解ができる人」の方が、価値が高まります。IQ(知能指数)、EQ(心の知能指数)に続く第3の知能と呼ばれるCQ(異文化理解力)を学びたい人は読んでみてください。

 

言語転移が起きやすいケース

状況によって、言語転移が起きやすいケースがあります。

生の英語に触れず、文法学習しているとき

生の英語に触れず、文法学習をしているときに言語転移が起きやすいです。つまり、間違った文法や発音が身につきやすいということです。

なぜなら生の英語に触れないため、「何が自然な英語表現なのか」の感覚が育たないからです。

話すことを強制されるとき

では、アウトプットを増やせばよいか? というと、そうではありません。話すことを強制されるときにも転移が起きやすいです。

特に英語の基礎知識がない状態で、話す練習だけをすると、日本語の文法を頼って適当に単語をくっつけて話すクセがついてしまいます。

 

基礎知識がない状態で英会話スクールに通い、英会話の練習ばかりしていると、変なクセがついてしまうことがあります。変なクセがついた日本人英語でもスクールの先生は、長年の経験から意味を理解してくれます。しかし、仕事相手など普通の人には通じません。

 

英会話スクールの先生の反応を見て「自分の英語が通じている」と思っていたら、実は先生の理解力が高いだけだった、ということになりかねません。

 

この状態を続けると、クセが定着してしまい、なかなか治らなくなってしまいます。

このように、英語の知識がないうちから積極的に話す練習をすると、負の転移が起きやすいのです。

 

負の転移を避けるには、第二言語習得論の研究結果から「大量のインプットと少量のアウトプット」で学習を続けるのが好ましいと言われています。

 

以下の記事では、第二言語習得論も含めた「科学的な英語学習法」についてまとめたので、参考にしてみてください。

 

まとめ

この記事では「言語転移」を説明しながら、なぜ日本人にとって難しい英語があるのかを解説してきました。

記事の内容をまとめておきます。

この記事のまとめ
1. 第二言語を学習する際、母語の影響を受ける。これを言語転移と呼ぶ。
2. 特に日本語と英語は、言語間の距離が遠いため、間違いを生じる「負の転移」が起きやすい。
3. 負の転移を避けるためには、第二言語習得論の研究から導き出された「大量のインプット、少量のアウトプット」の学習を継続することが好ましい。
4. 言語の転移以上に、文化の転移に注意を払うべき。そのために、異文化理解力を身につける。

 

以下の記事も参考にしてみてください。

 

第二言語習得論の記事

⇒第二言語習得におけるインプット仮説とは? クラッシェンの理論と問題点を解説

第二言語習得におけるアウトプット仮説とは? スウェインの理論

大人は英語習得には手遅れ? 言語習得の臨界期仮説への批判と真実

 

参考文献

 

外国語学習の科学-第二言語習得論とは何か

英語教師のための第二言語習得論入門

第二言語習得と英語科教育法

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