AIで社会はどうなる?テクノロジーと社会の関係性

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「AIは私たちの暮らしや仕事にどんな影響を及ぼすの?」

 

この疑問に答えるには、テクノロジーと社会の関係性について知る必要があります。そして長期的な視点、短期的な視点の両面から考察することが重要です。

テクノロジーが社会全体に大きなインパクトを与えるのはAIが初めてではありません。産業革命時代の工場や機械も、社会全体に大きな影響を及ぼしました。歴史を振り返ることで、未来を予見できるようになります。

 

この記事では、歴史を振り返りながらテクノロジーと社会の関係を考察し、AIが社会に与える影響を解説します。

 

テクノロジーが社会を豊かにしてきた

歴史を振り返ると、テクノロジーが人の生活を豊かにしてきたことは疑いようがありません。現代の日本の家庭には、冷蔵庫、洗濯機、テレビがあります。スイッチを入れれば電気がつきますし、蛇口をひねれば水道から水が出ます。200年前には普及していなかったものばかりです。

 

「現代の平均的な家庭は、中世の王族が手に入れられなかった暮らしをしている。」

このように言われることもあります。

 

実際、社会が急速に豊かになったのは産業革命以降です。下の図は、世界人口の推移を表します。産業革命をきっかけに急速に人口が増加していることがわかります。

 

産業革命の前は、人口が増えると食料が足りなくなってしまうため、人口が増えない状態が続きました。いわゆる「マルサスの罠」です。ところが、産業革命(および農業革命)が起こると状況が一変します。テクノロジーにより生産性が向上したため、人口が増えても食料をまかなえるようになったのです。その結果、産業革命以降、急速に人口が増加しました。

 

一人当たりGDPも同様に、産業革命をきっかけに急速に増加しています。紀元前1000年から紀元後1750年までの2750年間、一人当たりGDPはほとんど増えませんでした。一方、1750年時点と現代を比べると20倍以上も一人当たりGDPが増加していることがわかります。

 

これらのデータからも、産業革命で社会が急速に豊かになったことがわかります。

産業革命は技術進歩で起きたわけではない|社会の価値観の変化

では、なぜ1800年頃に産業革命が起きたのでしょうか? 

逆に言うと、1800年以前には、なぜ産業革命が起きなかったのでしょうか?

諸説ありますが、テクノロジーの進歩が原因ではなく、テクノロジーと社会の関係性に理由があります。

 

産業革命前も高度な技術イノベーションがあった

下の図は、産業革命前に起きた発明です。いずれも高度な技術が使われており、産業革命時代の発明にと同じくらいレベルの高い発明と言われています。

 

たとえば、「アンティキテラの機械」は古代ギリシャ時代(紀元前3世紀~1世紀)に作られた歯車式の機械です。天体運行の予測に用いられたと言われ、世界最古のアナログコンピューターとも呼ばれています。

 

カーディフ大学のマイケル・エドマンド教授は次のように述べています。

「この装置はこの種のものとしては抜きん出ている。デザインは美しく、天文学から見ても非常に正確に出来ている。機械の作りにはただ驚嘆させられるばかりだ。これを作った者は恐ろしく丁寧な仕事をした。歴史的にまた希少価値から見て、私はこの機械はモナ・リザよりも価値があると言わねばならない」。

他にも機械式時計、グーテンベルクの活版印刷、ガリレオの望遠鏡など精巧に作られた発明品が数多く存在しています。

このように、産業革命前にも高度な技術が発展していたことがわかります。

 

産業革命前はテクノロジーがつぶされていた

では、なぜ産業革命前はテクノロジーが普及して人々の生活が豊かになることがなかったのでしょうか?

それは、当時の支配階級にとって、生産性を改善するテクノロジーを推進するインセンティブがなかったからです。当時は王族や諸侯が支配階級でした。彼らはテクノロジーにより生産性が上がり、労働者が職を失うことを恐れました。なぜなら、労働者が職を失うと暴動が起きるなど社会が不安定になり、支配体制が不安定になるからです。

つまり、「テクノロジーから得られるもの<<失うもの」という構図でした。

そのため、機械を作る発明家は保護されるどころか抵抗にあいました。テクノロジーの使用を禁止されたケースも多く見受けられました。工作機械が、当時主流だった家内制手工業を破壊するのが見えていたからです。

 

国民国家の台頭でテクノロジー導入の気運が高まる

しかし、次第に社会情勢が変わるとテクノロジーに対する態度が一変します。イギリスの名誉革命(1688~1689年)、フランス革命(1789~1795年)などを通じ封建制が衰退し、国民国家が台頭します。そして国家間の競争が激化します。

その結果、各国の支配層は他国からの支配を逃れるため、国力を増やすことにフォーカスが向くようになります。そのためテクノロジーを導入して生産性を向上させるインセンティブが働くようになります。

「テクノロジーから得られるもの>>失うもの」という構図に変わりました。

こうなると、支配階級はテクノロジーの普及を推進する立場となります。技術や機械に抵抗していたギルド(職人の集団)の力は弱くなっていきます。

 

労働者の抵抗は、政府につぶされた

工場や機械が普及すると、職人の仕事は失われます。たとえば、織物職人、靴職人などは工作機械により仕事がなくなりました。

実際、職を失うことに抵抗し、職人たちによる暴動が起こりました。機械打ちこわし運動とも呼ばれ、もっとも有名なのはイギリスの「ラッダイト運動」です。

ラッダイト運動は1811~1817年頃に起きた機械打ちこわし運動です。機械により職を失うことを恐れた手工業者や労働者が機械を破壊して回った暴動です。

 

以前であれば、この運動は黙認されていた可能性もあります。なぜなら支配階級も機械化に反対していたからです。しかし、この当時すでに政府は産業革命を推進する立場にありました。そのため、警察が動員されラッダイト運動を鎮圧されました。

他にも機械化に対する労働者の反抗がありましたが、同様に政府によってつぶされてしまいました。

その結果、産業革命が進んだと言われています。

普及しやすいテクノロジー、普及しづらいテクノロジー

次に普及しやすいテクノロジーと普及しづらいテクノロジーの違いについて解説します。

さまざまな観点がありますが、テクノロジーと社会との「摩擦」が大きいと、普及しづらくなります。

摩擦1|人間の本能(穴居人の原理)

穴居人(けっきょじん)の原理とは、新しいテクノロジーと人間の本能が対立した場合、人間の本能が勝つという原則です。

穴居人とは、洞窟で暮らしていた初期の原始人を指します。私たち人間の本能は穴居人の時代から変わっていません。なぜなら、穴居人の時代から遺伝子や脳のレベルで、大きく変わっていないからです。

 

穴居人は、生き残るために「獲物の証拠」「仲間からの評価」を重視しました。その理由は、「マンモスを捕まえた」という話を聞いても、実際に現物を確認しなくてはお腹を満たせないからです。また、集団で狩りをするため、仲間外れにされると飢え死にしてしまうからです。

 

そして、これらの穴居人の本能は現代の私たちの中にも生き続けています。

そのため、オンライン化の技術が進んでも、WEB会議よりも対面会議を好む人が多くいます。あるいはGoogleグラス(ARグラスの一つ)のように技術が素晴らしくても、見栄えが良くないとなかなか普及しません。

 

以前からDX(デジタルトランスフォーメーション)のテクノロジー自体はありましたが、穴居人の原理が働き普及が進みませんでした。コロナ(COVID19)の影響による社会の価値観の変化により、はじめてDXが加速されました。

このような穴居人の原理があるため、技術が発展してもすぐに普及するとは限りません。

 

摩擦2|労働置換技術

テクノロジーは大きく2つに分類できます。「労働補完技術」「労働置換技術」です。

労働補完技術とは、人の労働を手助けするテクノロジーです。たとえばパソコン、スマホなどです。洗濯機、冷蔵庫などの家電も労働補完技術の一種です。労働補完技術は、使う側のメリットが大きくデメリットが小さいため、社会との摩擦が小さく普及しやすいです。

 

一方、労働置換技術とは、人の仕事を奪うテクノロジーです。産業革命時代の工場機械により、多くの職人の仕事が失われました。また、電気の発明によりガス灯をともす点灯員の仕事がなくなりました。

多くの人が失業するリスクがある労働置換技術は社会との摩擦が大きく、普及しづらくなります。

 

AIは労働置換技術

近年、AIをはじめとするテクノロジーの発展を不安視する声が高まっています。その理由は、AIは労働置換技術だからです。AIにより単純作業だけでなく、これまで人の経験や知識が必要だった分野の仕事がなくなる可能性があります。

 

たとえば翻訳作業には、専門的な知識が必要とされてきました。しかし、自動翻訳の精度が向上したことで、日常的な翻訳作業は自動翻訳ツールで十分になりました。人が翻訳する必要があるのは、一部の専門的な領域の翻訳や、行間を読む必要があるときに限られてきています。

実際、上記の文章をGoogle翻訳で英語に訳してみると、違和感のない文章が生成されます。

 

マーケティングにおいてもAIが大きな変革をもたらす可能性があります。日立製作所の矢野和男氏の『データの見えざる手 ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』に事例が紹介されています。ある店舗の売上を向上させるプランを出すため、マーケティングの専門家とAIで競争をしました。その結果、AIはマーケティングの専門家よりも優れた成績を収めました。

このように、AIはさまざまな分野で人の仕事を置き換えていくと予想されています。

「AIは天使か悪魔か?」の問題点|時間軸が重要

AIは社会に大きなインパクトを与える可能性があり、「AIは天使か悪魔か?」といった議論がなされることがあります。あるいは、「AIに任せるところは任せ、人間はより高度な意志決定に携われば問題ない」と言われることもあります。

 

しかし、いずれの議論もAIが社会に与える影響を捉えそこなっています。AIが社会に与える影響を考察するには、歴史をひもとく必要があります。

長期的には、人々は豊かになる

AIの発展により、長期的には人々は豊かになると予想されます。大きく分けて3つの理由があります。

3つの理由
  1. AIにより生産性が向上する
  2. 消費サービス、医療の質が向上する
  3. 新たな仕事が生み出される

 

AIにより生産性が向上する

AIが導入されると、仕事の生産性が向上します。これまで、人手で行ってきたデータ処理やテストをAIが代わりにやってくれるようになるからです。特に、少子化が進み労働力の不足が懸念される日本にとって、AIは救世主となる可能性があります。

アクセンチュアの調査によると、2035年にはAIの導入で先進12か国の労働生産性が40%も上昇すると予測されています。特に日本はAI導入により3倍以上のGDP成長率が見込まれています。

 

⇒ご参考:アクセンチュアの調査結果

 

 

消費サービス、医療の質が向上する

生産性の向上だけでなく、個人の嗜好に合わせたサービスが提供されるようになる可能性があります。また、創薬や医療分野にも応用が始まっており、より健康な暮らしにつながります。

⇒ご参考:AI創薬の可能性

 

新たな仕事が生み出される

さらにAIにまつわる仕事が生み出されます。AIを作り出すプログラマー、AIを活用するマーケッターなどです。インターネットの発展により、WEBデザイナーやエンジニアが生まれたのと同じです。

AIと同様に労働置換技術が普及した産業革命時代を振り返ると、工場機械の普及により長期的に社会は豊かになったことがわかります。冒頭に示したように、産業革命により人口は急拡大し一人あたりGDPも増大しました。

AIも長期的には人々の暮らしが豊かになることに貢献すると考えられます。

短期的には、人の仕事が奪われる可能性

一方で、短期的には人の仕事が奪われる可能性があります。オックスフォード大学のマイケル・オズボーン教授とカール・フレイ フェローの研究によると、2050年までに47%の雇用がAIや自動化により失われるリスクがあります(アメリカでの調査結果)。

⇒ご参考:論文“Future Works"

具体的にどのような仕事が失われるのでしょうか?

次の図は、「自動化されるリスクの割合(横軸)」と、「アメリカにおける就労者の比率(縦軸)」を表しています。

 

このグラフから、「オフィス・事務サポート」、「販売」、「調理・ウェイター等」、「輸送・物流」、「生産」、「建設・採掘」は自動化リスクが高く、就労者も多い職業であることがわかります。

このように、AIや自動化により多くの仕事が失われると予測されています。

短期的=一人の一生

ここで問題になるのは、「短期的」というのが人の一生くらいの時間(50~100年)を表すことです。

過去に労働置換技術が普及した産業革命を振り返ると、工場機械の導入により社会全体の豊かさ(GDP)が増大するタイミングと、労働者の豊かさ(一人当たりGDP、収入)が増え始めるタイミングには50~100年のギャップがありました。

 

 

その間は、多くの労働者はテクノロジーにより職を失われたり収入が下がったりしました。そして、社会で格差が広がっていきました。なぜなら、多くの職が奪われる一方、工場を所有する資本家や、新しい機械に適応した人に富が集中したからです。

 

近年も富の格差が広がっていると言われています。この要因の一つに、AIや自動化が挙げられます。そして、産業革命の歴史から考えると、今後数10年にわたり格差は拡大し続ける可能性がある、といえます。

 

数10年後には、AIにより社会全体が豊かになったり、新しい職業が創造されたりするため、労働者全員が恩恵を受けられるはずです。

つまり、新しいテクノロジー、特にAIなどの労働置換技術が普及する時代において、一時的にテクノロジーにより職が失われる数10年間をどのように超えるかが大きな課題となります。そして、私たちはこの「はざまの時代」に生きているわけです。

これからの未来に必要なこと

では、このような「はざまの時代」に生きる私たちは、どのようにしたら良いのでしょうか?

社会に求められるスキルが変わる

これからの未来には、社会に求められるスキルが変わります。それに伴い、私たちには新たなスキルを身につけることが求められます。

先ほど紹介したオックスフォード大学のマイケル・オズボーン教授は、“Future Skills(未来のスキル)”という論文で2030年に必要とされるスキルを分析しています。

 

下の表にトップ10を示します。雇用との相関係数が高いという意味です。

 

トップ10を見ると、対人関係能力、創造力、学習力などいわゆるソフトスキルが上位にあることが分かります。なぜなら、これらのスキルはAIやコンピューターで代替が難しいからです。なかでも、「戦略的学習力」と呼ばれるスキルが1位です。戦略的学習力については次の節で紹介します。

 

反対に、ワースト10です。雇用との相関係数が低いという意味です。

機械を正確に管理、操作をしたり、正確に手作業を行ったりするスキルの価値が相対的に下がっていくと予想されています。なぜなら、ロボットやコンピューターが代替しやすいスキルだからです。

 

戦略的学習力とは?

“The Future Skills”で参照しているO*NET Onlineで、戦略的学習力の定義を見てみましょう。

⇒ご参考:O*NET online

Learning Strategies(戦略的学習力)

“Selecting and using training/instructional methods and procedures appropriate for the situation when learning or teaching new things."

(新しいことを学んだり教えたりするとき、状況に応じて最適な学習法を選び、実践できること。)

一言で表すと、「新しいことを学ぶスキル」です。

これから、テクノロジーの進化により、社会から求められるスキルが変わります。そのため、新しいことを学ぶスキルが最も重要になる、というわけです。

2030年に求められるスキル1位の戦略的学習力について、詳しく知りたい方は以下の記事を読んでみてください。

⇒ご参考:戦略的学習力とは|2030年の「未来に必要スキル」1位の身につけ方

 

まとめ|テクノロジーと社会の関係性は長期視点、短期視点が重要

この記事では、テクノロジーと社会の関係性を、産業革命の歴史と今後のAIのインパクトの観点で解説しました。

AIのように社会に大きなインパクトを与える「労働置換技術」は長期的には社会を豊かにしますが、数10年単位の間は労働者の職を奪ったり収入を下げたりして格差が広がります。

 

私たち個人としては、社会から求められるスキルの変化に対応していくことが重要です。この記事でも紹介した「未来のスキル」も参考にしてみてくださいね。

 

未来のスキル1位の「戦略的学習力」を身につけるには、「メタ認知力」が必須です。以下の記事も参考にしてみてください。

⇒ご参考:メタ認知とは?具体例でわかりやすく解説|メリットとデメリット

 

 

テクノロジー関連の以下の記事もどうぞ。

【SFの世界!】テクノロジーの未来|科学者が予測する2100年の世の中

 

テクノロジーの未来予測が難しい本質的な3つの理由|偉人の迷言も紹介

参考文献

Frey, C. B., & Osborne, M. A. (2017). The future of employment: How susceptible are jobs to computerisation? Technological Forecasting and Social Change, 114, 254–280.

Bakhshi, H., Downing, J. M., Osborne, M. A., & Schneider, P. (2017). The future of skills: employment in 2030. Pearson.

 


文庫 データの見えざる手 ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則

 


テクノロジーの世界経済史 ビル・ゲイツのパラドックス

 


テクニウム――テクノロジーはどこへ向かうのか?

 


〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則

 


2100年の科学ライフ

 


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