戦略的学習力を解説|2030年に必要とされるスキルの身につけ方

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あなたは「戦略的学習力」を知っていますか?

「戦略的学習力」は、オックスフォード大学の研究で「2030年の未来に求められる最も重要なスキル」として有名になりました。

 

戦略的学習力を言い換えると、新しいことを学ぶスキルです。

この記事では、オックスフォード大学の研究結果を紹介し、なぜ戦略的学習力が必要になるのかを解説します。さらに、戦略的学習力の身につけ方を詳しく解説します。

 

マイケル・オズボーン教授が提唱する「未来のスキル」

「雇用の未来」で有名な、マイケル・オズボーン教授とは?

英オックスフォード大学のマイケル・オズボーン教授は、機械学習の専門家で、主にテクノロジーと雇用の関係について研究しています。

⇒マイケル・オズボーン教授のサイト

 

オズボーン教授は2013年に”The Future of Employment(雇用の未来)”と題する論文を発表したことで有名になりました。

 

「雇用の未来」では、2050年までにAIにより47%の仕事が失われると論じ、世界中に衝撃を与えました。実際、この論文は日本でも有名になり、多くのニュース記事で取り上げられました。その結果、元マッキンゼー支社長である大前研一氏など各界の著名人とオズボーン教授のインタビューも行われています。

 

2030年に必要となる「未来のスキル」

マイケル・オズボーン教授は、2017年に「The Future Skills(未来のスキル)」と呼ばれる論文を発表しました。「未来のスキル」では2030年に必要とされるスキル、必要とされなくなるスキルを調査しランキング形式で公表しています。

 

AIの発展などにより、これからの社会で必要とされるスキルが変わります。たとえば、手作業に必要とされる手先の器用さは価値が下がる一方、AIを使ってビジネスを構築する力、組織を動かす力などは価値が高まります。

これらのスキルを、未来の雇用との関係性(相関係数)に基づいて順位付けをしています。

 

VUCAの時代に必要

そもそもなぜ、マイケル・オズボーン教授は今のタイミングで「未来のスキル」を発表したのでしょうか?

それは、現代が環境の変化が激しい時代だからです。”VUCA(ブーカ)の時代”とも呼ばれます。

VUCA(ブーカ)とは?
Volatility (変動性)
Uncertainty (不確実性)
Complexity (複雑性)
Ambiguity (曖昧性)

VUCAとは、上記の頭文字をとったものです。グローバルな繋がりが増し、テクノロジー進化の速度が速まったことで、世の中が「カオス」になっている状況を表しています。

※カオスとは物理学の用語で、複雑すぎる状態のため未来予測ができない状態を指します。

 

VUCAの時代には、社会から必要とされる職業が変わります。それにともない一人ひとりに求められるスキルも変化します。なぜなら、テクノロジーにより社会構造が根本から変わってしまうからです。

産業革命の時代も、求められるスキルの変化が起きた

歴史を振り返ると、テクノロジーにより社会構造が根本から変わるのは、今が初めてではありません。18~19世紀に起きた産業革命も、社会構造を変えました。

たとえば、産業革命前は手で織物を作っていまいしたが、産業革命後は機械で作るようになりました。そのため、手で織物を作っていた人たちは職を失うことになったのです。

 

長い目で見れば、産業革命により工業化が進み、工場での雇用が増えたため、社会全体で必要とされる雇用の数が減ったわけではありません。

しかし、産業革命の過渡期には、社会に求められるスキルが変わり、個人のスキルと社会のニーズにミスマッチが生じました。たとえば、手で織物を作るスキルが役に立たなくなり、工場で機械を動かすスキルが重宝されるようになる、などです。

その結果、新しいスキルの習得に遅れた人々は、雇用を失い苦労をしたと言われています。

 

産業革命の時代と同様に、AIやコンピューターが日進月歩で進化する現代は、社会構造が変わる過渡期にあると考えられます。つまり、一時的に(数10年単位で)、個人のスキルと社会のニーズにミスマッチが起きうる、ということです。

 

このミスマッチにより、多くの雇用者の職が失われることを、マイケル・オズボーン教授は危惧しています。だからこそオズボーン教授は、「これからの社会に求められる未来のスキルは何か?」を調査した、というわけです。

 

未来のスキルの1位が、「戦略的学習力」

“The Future Skills”の論文では、2030年の未来に求められるスキルを、「雇用との相関度」の高さに応じてランキング形式で示しています。下の表にトップ10のスキルを紹介します。

 

ベスト10を見ると、対人関係能力、創造力、学習力などいわゆるソフトスキルが上位にあることが分かります。なぜなら、これらのスキルはAIやコンピューターで代替が難しいからです。なかでも、「戦略的学習力」が1位です。

 

反対に、ワースト10を以下に紹介します。雇用との相関係数が低いという意味です。

 

機械を正確に管理、操作をしたり、正確に手作業を行ったりするスキルの価値が相対的に下がっていくと予想されています。なぜなら、ロボットやコンピューターが代替しやすいスキルだからです。

 

以下では、2030年に必要とされるスキルベスト1位の「戦略的学習力」について解説します。

 

戦略的学習力とは?

“The Future Skills”で参照しているO*NET Onlineで、戦略的学習力の定義を見てみましょう。

⇒ご参考:O*NET online

 

Learning Strategies(戦略的学習力)

“Selecting and using training/instructional methods and procedures appropriate for the situation when learning or teaching new things."

(新しいことを学んだり教えたりするとき、状況に応じて最適な学習法を選び、実践できること。)

一言で表すと、「新しいことを学ぶスキル」です。

 

新しいことを学ぶスキル

新しいことを学ぶとき、学習のアプローチによって、身につくスピードが大きく変わります。なぜならアプローチにより、学習効率が変わるからです。

 

たとえば英語力を上げたいと考えたとき、科学的に効果が示されている学習法を取り入れると、効率的に英語力を伸ばしやすくなります。

 

具体的には、第二言語習得論と呼ばれる学問分野の研究成果を取り入れた勉強法です。たとえば、「大量のインプットと少量のアウトプットで学習を設計する」、「リスニング力アップのため、ディクテーションやシャドーイングを取り入れる」などの学習法です。

このような情報を調べ、実践できる人は「戦略的学習力が高い」と言えます。

 

⇒ご参考:第二言語習得論は役に立つ?英語学習者が知るべき理由とは【必見!】

⇒ご参考:シャドーイングの4つの効果【最強の英語トレーニング法】

 

反対に、いきなり英会話スクールに通い英会話のレッスンを受けたり、リスニング力を上げるために聞き流しのトレーニングをしたりするのは、効率的な学習法ではありません。このような人は「戦略的学習力が低い」です。

 

上記の例のように、「科学的な学習法を取り入れる」アプローチに加え、「教えてもらえる専門家が知り合いにいる」、「学習しやすい環境づくりができる」なども、戦略的学習力と関係があります。

 

なぜなら、専門家の知り合いがいれば、その分野のポイントを教えてもらえるため、成長が速くなるからです。テニスを習うとき、プロのコーチに教えてもらうと上達が速いのと同じです。また、テニス部に入るなど、テニスをせざるを得ない環境に身を置くことも、上達の早道です。

 

戦略的学習力の2つの軸~何を、どのように~

ここで、改めて戦略的学習力を2つの軸で整理してみましょう。「何を学ぶか?」「どのように学ぶか?」の2軸です。

 

「何を学ぶか?」とは、どの分野を学習するかを決めることです。一方、「どのように学ぶか?」はいかに効率的に学習するか、を表します。

 

次の章で詳しく解説しますが、「何を学ぶか?」は①自分の強みと、②未来の社会に求められるスキルが重なる領域から選びます。企業のマーケティングにおいて、①自社の強み(シーズ)と、②お客様が求めるもの(ニーズ)がマッチする商品やサービスを作る活動に似ています。

 

一方、「どのように学ぶか?」は、効率的な学習法のテクニックを取り入れることが重要です。学問の研究で効果が示されたエビデンスに基づく学習法を取り入れる、学習を習慣化する方法を身につける、などのアプローチが挙げられます。

 

先ほど解説した英語学習法のアプローチは、「どのように学ぶか?」に当たります。

このように「何を学ぶか?」と「どのように学ぶか?」の両輪をセットで設計できる力が、「戦略的学習力」と言えます。

 

次の章では、戦略的学習力の身につけ方を解説します。

 

戦略的学習力の身につけ方

戦略的学習力の2つの軸「何を学ぶか」、「どのように学ぶか」に分けて、身につけ方を解説します。

何を学ぶか

「何を学ぶか?」を吟味することは非常に大切です。なぜなら、なかなか身につかないスキルや、世の中から求められていないスキルを学んでしまうと、せっかく努力しても得られるものが少なくなってしまうからです。

 

「将来の仕事を確保する」ために、何を学ぶかを選ぶ場合、以下の視点が重要です。

何を学ぶか? を選ぶ2つの視点
1. 自分の強みを見極める~遺伝の影響~
2. 未来の社会に求められるスキル

 

自分の強みを見極める~遺伝の影響~

多くの研究結果から、人の能力や才能の大半は遺伝で決まることが明らかになっています。下の図は、一卵性双生児(双子)を調査した結果明らかになった、さまざまな能力や性格への遺伝・環境の影響を表しています。

 

図を見るとわかるように音楽やスポーツの才能は、遺伝で8~9割が決まります。音楽やスポーツほどではありませんが、数学、執筆能力(文章力)、IQ、外国語能力の5~8割は遺伝の影響です。

 

遺伝的に強みがある分野であれば、身につくのも早く、他の人よりも高いレベルに到達できます。反対に、遺伝的に強みがない分野の場合、いくら努力してもなかなか身につきませんし、他の人とくらべ高いレベルに到達するのは困難です。

 

ですので、「自分の生まれ持った強みがどこにあるか?」を見極めることが大切です。もちろん、自分の強みがどこにあるか、事前に判断するのは困難です。実際に学習してみて、他の人と比べて習得が速いか、遅いかなどを客観的に見ることが必要になります。

 

未来の社会に求められるスキル

2つ目の視点は、未来の社会に求められるスキルを選ぶことです。なぜなら、社会にニーズが高いスキルには多くの雇用が生まれるからです。

たとえば、現在であればAIのプログラムを組む高度なスキルや、AIやデータ分析を活用してビジネスモデルや戦略を立案するスキルのニーズが高まっています。また、グローバル化に伴い、英語で仕事をこなすビジネス英語力が求められています。

 

これから先に必要とされるスキルはある程度予想できます。なぜなら、社会構造の変化はある程度予測できるからです。実際、マイケル・オズボーン教授が提唱する「未来のスキル」のランキングが参考になります。

参考までに、「未来のスキル」のランキング上位20位までをまとめておきます。このリストも参考にしながら、身につけるべきスキルを選んでみることをオススメします。

 

どのように学ぶか

「どのように学ぶか?」は、いわゆる効率的な学習法です。これまでの研究や先人の経験により、効率的な学習法にはルールがあります。

 

たとえば、以下のようなものです。

 

効率的な学習法
① 明確に目標を定義する
② インプットだけでなく、アウトプットをする
③ 学習する分野の専門家からフィードバックを受ける
④ 受け身の学習ではなく、講師や他の学習者とインタラクティブに学ぶ
⑤ 少し難易度の高い課題に取り組む
⑥ 気合や根性ではなく、学習を習慣化する
⑦ 人間関係も含め、学習に集中できる環境を設計する

 

これらのアプローチを実践できる人は、どんな分野であっても効率的に学習を進められます。

たとえば、ビジネス英語学習に置き換えると、たとえば以下のようになります。

 

ビジネス英語の効率的な学習法
① なぜ、英語を学ぶのか、目的と目標を明確にする
② 大量のインプットと、少量のアウトプットのバランスで学習する
③ ビジネス英語の専門家、コーチから学習の進め方のフィードバックを受ける
④ 受け身ではなく、先生に質問する
⑤ 現状より、少しレベルの高いトレーニングに取り組む
⑥ 習慣化のテクニックを取り入れ、英語学習を習慣化する
⑦ 一緒に英語を学習する仲間を作る

 

詳しくは以下の記事にまとめました。英語学習を題材にしていますが、何にでも応用できる学習法です。なぜなら、さまざまな分野の学習において効果が示されているからです。

戦略的学習力を身につけたい方は参考にしてみてください。

 

⇒ご参考:【知らないと損!】科学的な英語勉強法5つのポイント|効率が変わる学習法

 

メタ認知力を身につける

本質的に戦略的学習力を身につけるには、「メタ認知力」を身につけることが有効です。メタ認知力とは、「一段、上の視点からものごとを見る力」を指します。

 

なぜメタ認知力を身につけることが、戦略的学習力アップにつながるの? それは「戦略的学習力」とは、「学習をメタ認知すること」に他ならないからです。

 

メタ認知力が低い人は、とりあえず目の前にあるスキルを学ぼうとしたり、目についた学習法に飛びついたりしてしまいますたとえば「英会話を身につけよう!」と思ったとき、いきなり英会話スクールに通いだす人はメタ認知力が低いです(下のイメージ図を参照)。

 

反対にメタ認知力が高い人は、「そもそも、いま自分は英語を学ぶべきか?」と考えます。戦略的学習力の「何を学ぶか?」を自問します。

仮に英語を学ぶべきだと判断したときは、「どのように英語学習を進めれば、効率的に英語力を伸ばせるのだろうか?」と考え、情報収集をします。戦略的学習力の「どのように学ぶか?」に関する問いかけです。

 

 

実際さまざまな研究結果から、メタ認知ができる人は、学習効率が高いことが示されています。このように、メタ認知力と戦略的学習力は密接に結びついています。

 

では、メタ認知力はどうしたら身につくのでしょうか? メタ認知力の5つの鍛え方を、以下の記事に詳しく解説したので、興味がある方は参考にしてみてください。

 

⇒ご参考:【戦略的学習力が身につく】メタ認知を具体例でわかりやすく解説~重要スキル~

まとめ|戦略的学習力を身につけ、未来に備えよう

この記事では、マイケル・オズボーン教授の論文「未来のスキル」を紹介し、2030年に求められるスキル1位の「戦略的学習力」について解説しました。

戦略的学習力は、どんな分野にも適用できる、いわば汎用スキルです。一朝一夕で身につくものではありませんが、ぜひこの記事を参考に戦略的学習力を意識的に身につけることをおすすめします。

 

参考文献

Frey, C. B., & Osborne, M. A. (2017). The future of employment: How susceptible are jobs to computerisation? Technological Forecasting and Social Change, 114, 254–280.

Bakhshi, H., Downing, J. M., Osborne, M. A., & Schneider, P. (2017). The future of skills: employment in 2030. Pearson.

 

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これからの時代、「異文化理解力」は「英語力」以上に重要になっていきます。

なぜなら、自動翻訳ツールなどテクノロジーの進化のおかげで外国人とコミュニケーションをする機会が増えるからです。

 

これまでは、言語が壁になっていましたが、今後は言語の壁がどんどん薄くなっていきます。

そのときに重要になるのが「異文化理解力」です。

 

なまじ外国人とコミュニケーションが取れてしまうので、異文化のギャップが浮き彫りになります。

 

 

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