
英語勉強法、トレーニング法は数多くありますが、シャドーイングは最強のトレーニング法と言われます。
特にリスニング力、スピーキング力を伸ばしたい人には、うってつけのトレーニングです。
この記事ではシャドーイングをすることで、具体的にどのような効果が得られるか、学術研究の結果も踏まえて詳しく解説します。
英語のリスニングやスピーキングに悩んでいる人は読んでみてください。
この記事の目次
シャドーイングとは?
もともとは同時通訳のトレーニング
シャドーイングとは、英語音声の後について発声するトレーニングです。音声の後に影(シャドー)のようについて発声するので、シャドーイングと呼ばれます。
シャドーイングはもともと、同時通訳者のためのトレーニングとして知られていました。
同時通訳者は、外国語を聞くと同時に日本語に通訳し続けることが求められます。そのトレーニングの前段階として、日本語に訳さず、聞こえてきた音声の英語をいったん頭の中にストックして、聞き取った言葉を復唱する練習をします。英語を音声のまま一時的に保存・記憶して、それを口に出して言うことが通訳の前提条件と考えられてきたからです。
近年になり、シャドーイングによる英語力アップの効果が明らかになってきたため、多くの英語学習者に知られるようになりました。
負荷が高いから英語力が伸びる
シャドーイングは負荷がかかるトレーニングです。
なぜなら、シャドーイングをするときに以下の4つのプロセスを経るからです。
② 音声を記憶する
③ 音声を口に出して再現する
④ 自分が口にした英語を聞く
リスニングは①、②のみですので、シャドーイングの負荷が高いことが分かります。
実際、シャドーイング学習時とリスニング学習時の脳の活動を近赤外光イメージング装置で測定したところ、シャドーイング学習時の方が脳の活動が活発であることがわかりました。
ご参考:英語シャドーイングが英語読解プロセスに与える影響:近赤外分光法による脳内処理メカニズムの検討
この実験結果からも、シャドーイングは負荷が高いトレーニングであることがわかります。そして、シャドーイングは負荷が高いからこそ英語力が伸びるのです。
英語シャドーイング4つの効果
- リスニングスキルの向上~音声知覚の自動化~
- 文法や定型表現が定着~無意識に使えるように~
- 発音が改善する
- 英語のリズムやイントネーションが身につく
リスニングスキルの向上~音声知覚の自動化~
なぜ、シャドーイングがリスニングスキル向上に効果があるのでしょうか?
それは、英語の音声をモノマネするからです。モノマネをするには、英語の音に注意を払い、自分でも実際に繰り返す必要があります。このプロセスを経ることでリスニングスキルが向上するというわけです。
そもそも、英語が聞き取れないのには3つの原因があります。
2) 英語の音声に関する知識が少なく、ネイティブが話す「音」を聞き取れない
3) 英語を聞いたそばから、頭で処理できない
シャドーイングは上記2)と3)の改善効果があります。
英語の音声変化がわかるようになる
英語ネイティブは「教科書」通りに発音していないことが大半です。言いやすいように「省エネ」をしているからです。
日本語でも「水族館」と言うとき「すいぞっかん」と発音することがあります。本来であれば「すいぞくかん」ですが、「く」が省略されて「っ」となっています。
英語も同様で、「Let it go.」は「レット・イット・ゴー」ではなく「レリゴー」となります。
シャドーイングをやると、この音声変化が身につきます。なぜなら、ネイティブが発音している通りに発生しないと、シャドーイングのスピードについていけないからです。
実際にやってみるとわかりますが、「レット・イット・ゴー」と発音すると、英語の音声についていけません。音声についていくためには、ネイティブのように「レリゴー」と発音する必要が生じます。
そのため、シャドーイングをすることで英語の音声変化がわかるようになります。もちろん、事前に英語の音声変化に関する知識を身につけておくことが重要です。
英語の音声変化については、専門家にインタビューした以下の記事を参考にしてみてください。
➡【著者インタビュー】「英語の5つの音声変化」を知るだけでは意味がない理由とは?
英語を高速で処理できるようになる~脳の仕組みでわかる~
英語を聞くだけではリスニング力の伸びは限定的です。反対に、実際に自分で英語を口にすると、リスニング力を伸ばしやすいです。
なぜなら音声の認識は、単に耳で聞き取るだけでなく、自分で発音する影響を受けるからです。
最近の脳科学の研究結果も、このことを裏付けています。
次の写真は、米Nature誌に掲載された論文から引用したものです。
英語母語のイギリス人の大人10人に、1音節の無意味語(意味を持たない言葉)を聞いてもらいました。そのときの脳活動をfMRI(核磁気共鳴)と呼ばれる手法で測定したものです。
ご参考:Listening to speech activates motor areas involved in speech production
すると音を聞いたときに、「運動」に関する脳の部位が活動していることがわかりました。黒く囲われた箇所が「運動」に関する脳の部位です。
つまり、実際に英語を口に出していなくても、聞き取った音に対応する音を発声するイメージをしているということです。
したがって、リスニング力を鍛えるには、実際に自分でも発音してみることが大事だと考えられます。そうすることで、聞き取った音と自分で発声した音がリンクするようになるからです。
文法や定型表現が定着~無意識に使えるように~
2つ目の効果は、文法や定型表現が定着し、無意識に使えるようになることです。
何度も繰り返し口にするため、文法や表現が身につくということです。スポーツの練習をイメージしてみてください。繰り返し素振りをすることで、無意識にフォームが定着するのに近いです。
反復練習により、長期記憶に定着する
先ほど説明したように、反復練習により単語、文法、定型表現が「長期記憶」に定着しやすくなります。
記憶には短期記憶と長期記憶があります。
短期記憶は数秒~数10秒の間、保持する記憶です。
一方、長期記憶は数年~数10年の間、保たれる記憶です。たとえば、しばらく自転車に乗っていなくても身体が覚えているので運転できます。これは、自転車の乗り方が長期記憶に保存されるからです。
同様に、シャドーイングを繰り返し行うことで単語、文法、定型表現が長期記憶に定着されるようになります。
発音が改善する
シャドーイングを何度も繰り返すことで、次第に発音が改善されます。なぜなら、英語音声を「モノマネ」するからです。つまり、正しい発音を聞きながら自分でも発声するため、徐々に正しい発音に近づいていくということです。
さらに効果的なのは、シャドーイングをする際に自分の音声を録音して、教材の英語音声と聞き比べることです。どの部分が正しく発音できていないかを、自覚するためです。
実際、私はシャドーイングを2ヵ月続けた結果、発音を改善できました。
次に示すのはVERSANTと呼ばれる英語のスピーキングテストの結果です。黒い棒グラフがシャドーイングの練習前、赤い棒グラフが2ヵ月間シャドーイングのトレーニングをした後の結果です。
グラフを見るとわかるように、発音が有意に改善されています。
英語のリズムやイントネーションが身につく
英語は、文章を読むときにリズムやイントネーション(抑揚)が重視されます。重要な箇所は強くゆっくり、重要でない箇所は弱く速く発声します。
反対に、日本語は強弱、音の高低差が小さく平坦です。
下の図は英語と日本語の抑揚のイメージです。英語にはリズムと抑揚があるのに対し、日本語は平坦な様子を表しています。
英語ネイティブからすると、日本人が話す平坦な英語は、英語に聞こえません。ですので、リズムやイントネーションを身につけることが重要です。
シャドーイングの訓練をすると、英語のリズムやイントネーションが身につきます。英語の音声をモノマネするからですね。
実際シャドーイングにより、英語を話すときの抑揚が改善するとの結果が出ています。
→ご参考:
シャドーイングは最強の英語トレーニング法
このようにシャドーイングにより、さまざまな英語スキルを伸ばすことができます。世の中には多くの英語勉強法やトレーニング法がありますが、シャドーイングほど英語力を伸ばせるトレーニングはありません。
シャドーイングは負荷が高いからこそ、最強の英語トレーニング法なのです。
2種類のシャドーイングと取り組む順番
実はシャドーイングには2種類のやり方があります。
プロソディ・シャドーイング~初級者・中級車向け~
「プロソディ(韻律)」とは発話のスピード、高さ、強さなどを指します。プロソディ・シャドーイングとは、英語の発音に注意を向け、できるだけモノマネをしながら復唱するトレーニングです。
特にリズムやイントネーションなどのプロソディ(韻律)に注意して取り組みます。
この練習をすることで、英語の音を聞き取れるようになったり、発音やリズムが改善したりします。
プロソディ・シャドーイングは何度も繰り返し、無意識にできるレベルまで取り組むのがポイントです。
コンテンツ・シャドーイング~上級者向け~
もう一つのコンテンツ・シャドーイングは、上級者向けのトレーニングです。コンテンツ・シャドーイングは、文章の意味内容をイメージしながらシャドーイングをするトレーニングです。
文章の意味を考えながら、スラスラと音声がでてくるようになるのが目標です。
コンテンツ・シャドーイングができるようになると、リスニング時の音声知覚が自動的にできるようになります。つまり、リスニングの負荷が大幅に減ります。
さらに、コンテンツ・シャドーイングを繰り返し行うことで、単語、文法、定型表現が定着します。
コンテンツ・シャドーイングは、とても負荷の高いトレーニングなので、まずはプロソディ・シャドーイングから始めることをオススメします。
シャドーイングのやり方6ステップ
次にシャドーイングのやり方の6ステップを紹介します。ここでは、プロソディ・シャドーイングのやり方を説明します。
1. 教材を選び、シャドーイングの音声と文章(スクリプト)を準備する
2. 文章を見ずにシャドーイング用の音声を聞く
3. 文章を読み、わからない単語や表現を調べる
4. 文章を見ながら音声を聞き、「英語の音の変化」をチェックする
5. 文章を見ながら、オーバーラッピングする
6. 文章を見ずにシャドーイングする(プロソディ・シャドーイング)
オーバーラッピングとは、英語の音声と同時に発生するトレーニングです。シャドーイングのやり方6ステップの詳細は次の記事にまとめたので、読んでみてください。
➡英語シャドーイングの正しいやり方5つのコツ|TOEICやビジネス用教材も紹介
シャドーイングにオススメの教材
シャドーイングの教材選びで重要な点は2つあります。
難しすぎない教材を選ぶこと
シャドーイングは負荷が高いトレーニングなので、難しすぎる教材に取り組むと挫折してしまいます。文章を見ずに聞いて、30~70%くらい理解できる教材を選ぶとよいでしょう。
理解度30%以下の教材は難しすぎます。
自分が使いそうな英語が含まれる教材を選ぶこと
日常会話を身につけたいのであれば、ドラマや映画のスクリプト(原稿)を教材に使うのもよいです。反対に、ビジネス英語を使うなら、ビジネス英語が出てくる教材を選びます。
なぜなら、自分があまり使わない英語表現が多く出てくる教材を使っても、覚えた表現が無駄になってしまうからです。
私は以前、シャドーイングの教材選びに失敗したことがあります。ネットの情報で『プラダを着た悪魔』という映画のスクリプトがシャドーイングにオススメとの情報を見たため、実際に試してみました。『プラダを着た悪魔』はファッション業界を描いた映画ですが、私はファッション業界と縁もゆかりもありません。
そのため、映画に出てくる表現をあまり活用できませんでした。
意味がなかったとは言いませんが、もっと適切な教材を選べばよかったと後悔しました。
以下ではビジネス英語を身につけたい人にオススメのシャドーイング用教材を紹介します。
スタディサプリEnglish TOEIC(スマホアプリ)
スタディサプリEnglish TOEICは、リクルート社が開発したスマホアプリで、TOEIC対策アプリとして有名です。
TOEICのリスニング対策のためシャドーイングをするなら、スタディサプリ ENGLISHを使うことをオススメします。
なぜなら、TOEICを模擬した例文が豊富だからです。たとえば、リーディングの長文読解であるPART7。
スタディサプリEnglishには「音読」機能があり、リーディングパートであっても音声を聞くことができます。
この音声を教材としてシャドーングの練習をします。
スタディサプリEnglish TOEICは、シャドーイングの音声としてだけでなく、TOEIC対策にはテッパンの教材です。
7日間の無料体験もあるので、TOEIC対策をするのであれば試してみることをおすすめします。
TED talks
知的に面白いプレゼンを教材に使いたいなら、TEDがオススメです。
TEDとは”Technology Entertainment Design”の略で、学術、エンターテイメント、社会課題、デザインなど様々な分野の第一線で活躍する人を講師として招き、プレゼンテーションを主催する団体です。
TEDの精神の”Ideas worth spreading”にある通り、プレゼン内容は知的好奇心が刺激されるものばかりです。
TEDのプレゼンの全てではありませんが、スクリプトが収録されているものがあります。下図のように3ステップでスクリプトを見ることができます。
私はアンジェラ・ダックワーズの”Grit”をシャドーイングの教材に使いました。ベストセラーになった心理学の書籍の著者で、内容にも興味が持てるものでした。
きっと、あなたが興味を持つプレゼンがあるので、どんな内容があるか見てみることをオススメします。
NHK world online
日本に住む外国人向けにNHKが提供する英語ニュースのアプリです。
音声と英語スクリプトがついているので、シャドーイングに使えます。
NHK world onlineをオススメする理由は、日本のニュースを中心に扱っているからです。私たち日本人にとって、日本のニュースは内容を理解しやすいので、英語のトレーニングに集中しやすくなります。
反対にアメリカやイギリスのニュースをシャドーイングの教材に使うと、内容の理解に時間がかかってしまいます。なぜなら、海外の歴史や文化を知らないとニュースの意味を理解できないことがあるからです。
➡ご参考:海外の英語ニュースサイトを使った勉強をオススメしない理由【七面鳥の恩赦!?】
ですので、ニュース音声をシャドーイング教材に使うときは、NHK world onlineを使うことをオススメします。
もちろん、上級者であればCNNなど海外のニュースをシャドーイングの音声にしてもよいでしょう。
まとめ|シャドーイングは最強の英語トレーニング法
この記事では、シャドーイングで得られる効果について詳しく解説しました。
改めてまとめると、以下の4つの効果です。
- リスニングスキルの向上~音声知覚の自動化~
- 文法や定型表現が定着~無意識に使えるように~
- 発音が改善する
- 英語のリズムやイントネーションが身につく
シャドーイングは負荷のかかるトレーニングです。だからこそ、英語力が伸びます。2ヵ月毎日続ければ、大きな変化を感じられるはずです。
以下の記事にシャドーイングの具体的なやり方や、どの位の量を毎日やればよいのか詳しく解説したので参考にしてみてください。
➡英語シャドーイングの正しいやり方5つのコツ|TOEICやビジネス用教材も紹介
参考文献
英語シャドーイングが英語読解プロセスに与える影響:近赤外分光法による脳内処理メカニズムの検討 (門田修平、他、2014)
外国語を話せるようになるしくみ シャドーイングが言語習得を促進するメカニズム
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- 無駄な学習をしないので、最短で”仕事で結果を出せる”英語力が身につく。
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