「メタ認知」を知っていますか?
メタ認知を身につけると、以下のようなメリットがあります。
- 情報に惑わされず、質の高い意志決定ができる
- 多様性のある環境で活躍できる
- 21世紀の重要スキル「戦略的学習力」が身につく
- 感情に振り回されず、心穏やかに暮らせる
この記事では、具体例を交えてメタ認知を詳しく説明。さらに、メタ認知力の鍛え方を紹介します。記事の最後に参考文献も紹介しますので、さらに詳しく知りたい方は読んでみて下さい。
- メタ認知とは、「もう一人の自分が、自分を見ている」幽体離脱のような状態
- メタ認知が、21世紀に必須のスキルである理由
- メタ認知の鍛え方3つ
タップできる目次
メタ認知とは何かをわかりやすく解説
メタ認知を簡単に表すと「幽体離脱」
そもそも「メタ認知」とは何なのでしょうか?
メタは「上の」という意味。つまり、メタ認知とは「上の視点から見た認知」ということ。
これだとわかりづらいのでイメージを説明します。
一言で表すと、メタ認知とは「もう一人の自分が、自分を客観的に見ている」状態。いわば、幽体離脱して自分を眺めている状態です。
図に表すと以下の通り。もう一人の自分の視点で、上から自分を眺めています。
すると、普段の視点では気づけないことにも、気づくことができます。
反対に、メタ認知ができていない状態を表したのが次の図です。
目の前のことしか目に入らず、「気づけていないこと」があることに気づいていない状態です。
メタ認知の起源|古くはソクラテスの「無知の知」
メタ認知の起源をさかのぼると、古代ギリシアのソクラテスに行き当たります。
有名な「無知の知」。すなわち、「自分がものごとを知らないことを知っている」ということ。
もう一人の自分が客観視して、「自分が知らないということ」に気づいている状態です。
メタ認知は1970年代に生まれた、比較的新しい言葉
一方、「メタ認知」という言葉は、1970年代に認知心理学の分野で生まれました。Jhon・H・Flavell(ジョン・H・フラベル)というアメリカの心理学者が論文で報告しています。
たとえば、以下の論文。メタ認知は、英語では”Metacognition”です。
その後、教育分野でもメタ認知の重要性を指摘する報告が多くなされています。たとえば、メタ認知力が高い子供は、学習効果が高いなど。研究結果によると、IQよりもメタ認知力の方が学習への影響が大きいとのこと。
つまり、「何が分かっていて、何が分からないのか」を自覚しながら学ぶと、効率よく学習を進められます。
メタ認知力はビジネスでも注目されるようになってきた
さらに、メタ認知はビジネスの世界でも注目されるようになっています。
後ほど詳しく説明しますが、メタ認知力を身につけると、
- 感情に振り回されず、質の高い意志決定ができる
- 新しいことを学習するスピードが速くなる
- 多様性のある環境で成果を出しやすくなる
など、21世紀のビジネスで求められる力が得られるからです。
メタ認知力が高い人の特徴
続いて、メタ認知力が高い人の特徴を解説します。
自分や他人の感情に振り回されない
メタ認知力が高い人は、自分や他人の感情に振り回されません。
なぜなら、自分や他人の感情を客観視できるからです。
たとえば、友人と待ち合わせをして、相手が遅れてきたとき、イライラして怒りを感じたとします。このとき、メタ認知力が高い人は、「なぜ、自分は怒りを感じているのだろう?」と自分の感情をモニタリングします。
そして、
「今日は予定が詰まっているから、あとのスケジュールに影響があると困るのだな」
「自分自身が、“時間を守るべき”という価値観を持っているから、遅れる人がいるとイライラするんだな」
など、客観的に捉えようとします。その結果、怒りの感情に対処することができます。
反対に、他人が怒っている場面に遭遇したとき。
メタ認知力が高い人は「なぜ、この人は怒っているのだろうか?」と考えます。
そして、
「相手は何か困っていることがあるのかもしれない」
「相手が大切にしている価値観を侵害してしまったのかもしれない」
と仮説を立てます。
そうすると、相手の怒りに対して感情的に応じるのではなく、冷静に対応できるようになります。
このように、メタ認知力が高い人は、自分や他人の感情に振り回されません。
人間は自分勝手で自己矛盾があると自覚している
人間は誰しも、多かれ少なかれ自分勝手で自己矛盾があるものです。
メタ認知力が高い人は「自分は自己矛盾に陥ることがある」と自覚しています。
自己矛盾に陥ることがある、と自覚しているからこそ他者に対する発言にも気をつかいます。
たとえば、「他人の批判をするな!」と批判する人。典型的な自己矛盾ですね。
メタ認知力が高い人は、このように明らかな自己矛盾をはらむ発言は控えます。仮に、このような発言をしてしまった場合でも、あとで気づいて訂正したりします。
些末な情報に惑わされず、質の高い判断ができる
メタ認知力が高い人は、デマ情報に惑わされず質の高い判断ができます。
なぜなら、情報を目にしたときに、うのみにするのではなく、
「この情報は、どのくらい信用できるのだろうか?」
「この話は、何を意味しているのだろうか?」
など考えるからです。
情報により信頼性に大きな違いがあります。学術論文に掲載されるような信頼度の高い情報から、個人の思い込みなど信頼性の低い情報までさまざまです。
このように、メタ認知力が高い人は、デマ情報に惑わされません。その結果、質の高い判断ができるようになります。
具体的な話を「構造」でとらえる
メタ認知力の高い人は、具体的な話を抽象化し「構造」で捉えます。
なぜなら、俯瞰(ふかん)してみることで、個別の事例にひそむ共通点を見つけることができるからです。
突然ですが、「コピー機」と「エレベーター」の共通点は何でしょうか?
両者には、「本体を安く提供して、その後の消耗品やメンテナンスで収益を上げるビジネスモデル」という共通点があります。
これは、「ヒゲソリの替え刃モデル(ジレットモデル)」などと呼ばれています。ヒゲソリで有名なジレット社が、「ヒゲソリの本体を安く売って替え刃で儲ける」という戦略をとったことから名づけられています。
メタ認知力が高い人は、具体的な話を聞いたときに、
「他の話、事例とはどのような関係性にあるのだろうか?」
「要は、どういうことなのだろうか?」
と抽象化して考え、ものごとを構造(関係性)で捉えます。
メタ認知力が低い人の特徴
次にメタ認知力が低い人の特徴を紹介します。
「言っていることと、やっていることが違う」のに気づかない
まず、「言っていることと、やっていることが違う」のに気づきません。
人は誰しも自己矛盾に陥ることがあるので、「言っていることと、やっていることが違う」ということは、誰しもがなりえます。
しかし、メタ認知力が低い人は、このことに気づきません。
なぜなら、「自分の考え、価値観は絶対正しい」と思い込んでいるからです。
ここで、
言っていること・・・自分が見ている世界
やっていること・・・他者から見られている世界
と言い換えられます。
「自分は絶対に正しい」と思い込んでいる人は、他者からどのように見られているかを想像することが困難です。そのため、「言っていることとやっていることが違う」状態を自覚できません。
「近頃の若い者はなっていない」
「近頃の若い者はなっていない」
この発言をする人は、メタ認知力が低い典型例です。
理由は以下の3点です。
- 自分が若かった頃のことを棚に上げている
- 歴史を振り返ると、経験を積んだ人が「近頃の若い者は・・・」というのは、ずっと変わらない構図。しかし、「今」だけ特殊化していることに気づいていない。
- このような若い世代を作ったのは、自分たちの世代と気づいていない
このように、「近頃の若い者はなっていない」という発言は、非メタ認知のど真ん中です。
メタ認知力が低い人|その他の特徴6つ
そのほか、メタ認知力が低い人の特徴をあげておきます。
- 他人の話を聞かず、一方的に自分の話をする人
- 根拠なく自身満々な人
- 感情のままに行動する人
- 思い込みが激しい人、そのことに気づいていない人
- 常にわかりやすい、具体的なノウハウを求める人
- 「自分は特殊」「この業界は特別」という人
共通するのは、「目の前を見る自分の視点」しか見えていないことです。
メタ認知のメリット
次にメタ認知のメリットを紹介します。
- 情報に惑わされず、質の高い意志決定ができる
- 多様性のある環境で活躍できる
- VUCA時代に必須のスキル
- 21世紀の重要スキル「戦略的学習力」が身につく
- 感情に振り回されず、穏やかに生きられる
情報に惑わされず、質の高い意志決定ができる
インターネットの普及により、わたしたちが受け取る情報量は増え続けています。
下の図はJETROが公表しているデータ量の推移です。2001年と比べ、2020年には1000倍以上のデータ流通量になると予測されています。
では、情報量が増えると人生は豊かになるのか?
必ずしもそうではありません。
なぜなら、数ある情報から、質の高い情報を見極める必要があるからです。
たとえばダイエット。糖質制限、たんぱく質、有酸素運動、バナナ、、、多くのダイエット情報が溢れています。
あるいは英語学習。「聞くだけ」で話せる、毎日5分継続、インプットが大事、、、さまざまなノウハウが出てきています。
情報は多くありますが、その中であなたにとって役立つものは、ほんのわずかです。だから、質の高い意志決定をするため、情報を取捨選択する必要があります。
言い換えると、「情報量が増えた結果、情報自身の価値は下がり、情報を取捨選択する力の重要性が増している」ということ。
メタ認知力を高めると、「情報を取捨選択する力」が身につきます。
なぜなら、目の前にある情報だけでなく、他の情報との関連性や、情報の出どころ(なぜ、この情報が出てきたのか)を含めて総合的にとらえられるからです。
そのため、メタ認知を身につけると、情報に惑わされず質の高い意志決定ができるようになります。
多様性のある環境で活躍できる
21世紀になり、多様性のある環境で仕事をしたり、暮らしたりする機会が増えました。国籍、文化、性別、年代が異なる人たちと過ごす機会です。
国籍、文化、性別、年代が異なると、価値観が違います。これらの人たちとコミュニケーションをとるには、他人の価値観を理解することが必要です。
中でも「異文化理解力(CQ=Cultural Intelligence)」はIQ、EQ(こころのIQ)に続く第3の知性とも呼ばれ、重要視されています。
たとえば、アメリカ人と一緒に仕事をするとき。アメリカと日本では文化が違うため、異なる価値観を持っています。
実際に私が出会った事例を紹介します。
スケジュール的にタイトなプロジェクトを、アメリカ企業と進めていたとき。ビジネスパートナーと電話会議で「ゴールに向けて一緒に頑張ろう!」と話しました。
その後、メールで問い合わせをしたのですがかえってきた返信に驚きました。
「私はこれから2週間バケーションだから、連絡は●●さんにして下さい」
クリスマスでも夏休みの時期でもなかったので、このようなプロジェクトが佳境の時期に2週間もバケーションをとるのか、と唖然としました。
私としては「このような時期にバケーションをとるべきではない」と感じたのでした。
私が感じた違和感は、アメリカと日本の文化の違いによるものです。文化的に、アメリカ人はバケーションをしっかりとる一方、日本人は仕事を優先する傾向があります。
このように、価値観が異なる人たちとコミュニケーションをとると、違和感を覚えることがあるでしょう。
しかしメタ認知力が高い人は、「自分の価値観は絶対ではない」と自覚しているので、柔軟に対応することができます。
反対にメタ認知力が低い人は、「自分の価値観が絶対だ」と無自覚に思っているので、相手の行動に怒りを感じます。
そのため、メタ認知力が高い人は多様性のある環境でもスムーズにコミュニケーションができ、活躍できるのです。
⇒異文化ギャップについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみて下さい。
ご参考:異文化理解の必要性 ~海外とコミュニケーションする人必見~
VUCA時代に必須のスキル
VUCA(ブーカ)という言葉を聞いたことがありますか?
Volatility (変動性)
Uncertainty (不確実性)
Complexity (複雑性)
Ambiguity (曖昧性)
の頭文字をとった言葉です。
グローバルな繋がりが増し、テクノロジー進化の速度が増したことで、世の中が「カオス」になっている状況を表しています。
※カオスは物理学の用語で、複雑すぎる状態のため未来予測ができないことを指します。
VUCAの時代には、メタ認知力は必須のスキルです。
なぜなら、テクノロジー進化により、世の中の常識が日々変わっていくからです。つまり、これまでの時代と比べて価値観の移り変わりが速いということ。
そのため、世の中と自分を俯瞰して眺め、世の中の変化に対応していくことが求められます。つまりメタ認知力はVUCA時代の必須スキルといってよいでしょう。
21世紀の重要スキル「戦略的学習力」が身につく
オックスフォード大学で、テクノロジーと雇用の関係を研究するマイケル・オズボーン教授は、2017年に「The Future Skills(未来のスキル)」と題する論文を発表しています。
この論文では、2030年に必要とされるスキル、必要とされなくなるスキルをランキング形式でまとめています。
必要とされるスキルの第1位は、「戦略的学習力(Learning Strategies)」。
簡単にいうと、新しいことを学ぶスキルです。戦略的学習力が高い人は、新しい知識やスキルを身につけるのが得意ということ。
この戦略的学習力とメタ認知力には深い関係があります。
これまでの多くの研究により、メタ認知ができる人は、学習効率が高いことが示されています。言い換えると、メタ認知力が高い人は、新しい知識やスキルを身につけるのが速いということ。
「何を学ぶべきか?」「どこまでわかっていて、どこから理解していないか」を考えるからです。
したがって、メタ認知を身につけると、「戦略的学習力」も身につきます。
21世紀の重要スキル「戦略的学習力」の詳細を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。詳しく解説しました。
⇒ご参考:戦略的学習力とは|2030年の「未来に必要スキル」1位の身につけ方
感情に振り回されず心穏やかに生きられる
メタ認知できる人は、自分や他人の感情に振り回されづらいです。そのため、心穏やかに生きられます。
アドラー心理学の「課題の分離」を説いた一冊です。
「課題の分離」とは、「自分の責任は自分でとり、相手の責任は相手にとってもらう」ということ。「課題の分離」ができると、余計な気を遣うことが減り、心穏やかに生きられるようになります。
たとえば、職場の上司の機嫌が悪いとき、あなたが気まずい思いを感じたとします。これは課題の分離ができていない状態です。
なぜなら、上司の機嫌が悪いのは上司の課題だからです。あなたが気まずい思いをしたり、上司の機嫌を取ったりする必要はありません。
言葉にすると簡単そうに見えますが、実際に課題の分離ができている人は非常に少ない(だからこそ、「嫌われる勇気」がベストセラーになるのでしょう)。
目の前の感情に振り回されてしまうからですね。
メタ認知ができる人は、「課題の分離」を実践しやすい。なぜなら、他者と自分の関係性を俯瞰(ふかん)することにより、どこまでが相手の課題で、どこからが自分の課題かを見極められるからです。
そのため、メタ認知ができる人は、感情に振り回されず心穏やかに過ごすことができます。
メタ認知のデメリット
ここまで、メタ認知のメリットを解説してきました。反対にデメリットはあるのでしょうか?
冷たい人だと思われる
メタ認知ができる人は、他人から「冷たい人」と思われる可能性があります。
なぜなら、自分のことも他人のことも客観的に見るクセがあるからです。
たとえば、先ほど紹介した「課題の分離」。
人によっては、「機嫌が悪い人がいるのに、なんであの人は機嫌をとらないのだろう。冷たい人だ!」と感じるかもしれません。
場合によって、メタ認知できる人は「冷たい人」と思われる可能性があります。
他人から考えを理解されないことがある
また、メタ認知できる人は他人から考えを理解されないことがあります。
なぜなら、多くの人と考え方や行動のとり方が違うからです。たとえば、多くの人が信じていることもデータやファクトを元にして検証します。そのため、世の中で言われることと反対の行動をとったりすることがあります。
また、メタ認知できる人は抽象的に物事を捉えるクセがあります。抽象的に考えていることを話しても、「話が抽象的すぎてわからない」と受け取られてしまうことがあります。
メタ認知力の5つの鍛え方
メタ認知にはデメリットもありますが、それを上回るメリットがあります。では、メタ認知力はどのように鍛えればよいのでしょうか?
4つの方法を紹介します。
- 自分の感情、思考、行動をモニタリングする
- 認知行動療法を実践し、「認知の歪み」を修正する
- TOCクラウドを使いこなす
- 「Why?」で考えるクセをつける
- 物事の共通点を探す(アナロジー)
1、2はマインドや価値観に関する習慣、4、5は思考法に関するトレーニングです。3は価値観と思考を変えるパワフルなツールです。
ここでは1、2、3について詳細に解説します。
4、5については以下の記事を参考にしてみて下さい。
⇒ご参考:メタ思考とは? トレーニング法も紹介~「バカの壁」を超える方法~
自分の感情、思考、行動をモニタリングする
自分の感情、思考、行動をモニタリングするとメタ認知力が高まります。具体的には、感情、思考、行動をふりかえるということ。なぜなら、メタ認知の第一歩は自分の感情、思考、行動を「自覚」することだからです。
私たちは、日々生きるのに忙しいため、何を感じ、何を考え、どんな行動をとったか意外と自覚していません。
この中でも特に、「感情」の動きに注意して記録をするとよいでしょう。
理由は2つあります。
自分の感情を自覚すると、感情にふりまわされなくなる
1つ目は、自分の感情を自覚することで、感情に振り回されづらくなるからです。
たとえば、怒りを感じているとき。
「あぁ、いま自分は怒っているのだ」と自覚すると、客観的に見られるようになり、怒りに身を任せてしまうのを防げます。
最初のうちは、リアルタイムで感情を自覚するのは難しいです。一日の終わりに、感情を振り返るクセをつけることで、次第にリアルタイムで自分の感情を自覚できるようになっていきます。
日記などを使って、文字に書き起こすのも効果的です。
感情をモニタリングすると、自分が持っている価値観がわかる
2つ目は、感情はあなたが持っている価値観とリンクしているケースが多いからです。
心理学分野では、「怒り」は二次感情といわれることがあります。
怒りの背後には、不安、つらさ、苦しさ、さみしさ、悲しさなどの一次感情がひそんでいるということです。これらの一次感情があふれると、怒りとして現れるということ。
さらに本質的には、これらの感情の背後には、あなたの「価値観」が潜んでいます。
たとえば、友人が約束の時間に遅れてきてイライラを感じたとします。
この場合、
- 時間はぜったいに守るべき
- 約束は守るべき
などの価値観を持っている可能性が高いです。
そして、「自分は大切にされていない」、「価値観を踏みにじられた」と悲しさ、つらさなどを感じる結果、怒りを覚えるというメカニズム。
つまり、自分の価値観に合わない状況のとき、ネガティブな感情が出てくるということ。反対に、自分の価値観に沿った状況のときは、ポジティブな感情が出てきます。
したがって、感情をモニタリングすると、背後にある価値観に気づきやすくなります。
認知行動療法を実践し、「認知の歪み」を修正する
認知行動療法は、もともと心理学で発展したもので、抑うつや不安症などのメンタル改善に効果があることが研究で示されています。
この認知行動療法は、メタ認知力を高めるのにも効果的です。
なぜなら認知行動療法は、自分の価値観が絶対ではなく、世の中にはさまざまな価値観に気づくためのワークだからです(認知行動療法では「認知の歪み」に気づくと言います)
※ご参考:認知の歪み
人間は、世の中をありのままに捉えることはできません。なぜなら、誰もが色眼鏡を通して世の中を見ているからです。色眼鏡は、「価値観」であったり「考え方のクセ」であったりします。
この色眼鏡のせいで、できごとを素直に受け取れないことがある。
たとえば、友達にメールをしたところ、1日経ってもメールの返信がこなかったとき。
人によっては、「友人に嫌われたのだ」と思い落ち込んでしまうことがあるかもしれません。
実際には、友人が忙しくてメールを見ていないかもしれませんし、スマホが壊れていたのかもしれません。あるいは、メールのコミュニケーションが苦手なだけかもしれません。
上記のように「友人に嫌われたのだ」と感じる人は、「メールの返事が来ない=自分のことを嫌い」という認知の歪み(0-100思考)を持っている可能性があります。
このような認知の歪みは、自分の持っている狭い価値観や世界観に由来するものです。反対にいうと、認知の歪みを自覚し、修正できれば、価値観や世界観が広がるということ。
そのため、認知行動療法はメタ認知力を上げるのに有効です。
認知行動療法について、さらに詳しく知りたい方は、以下の書籍などを参考にしてみて下さい。
TOCクラウドを使いこなす
TOCクラウドとは、対立するジレンマを解消する思考ツールです。
イスラエルの物理学者エリヤフ・ゴールドラット博士が生み出したものです。
※TOC:Theory of constraints(制約条件の理論)
多くの場合、ジレンマは思い込みによって生まれます。一人ひとりの価値観や認知の歪みが反映されているからです。
TOCクラウドは、この思い込みを「見える化」して、両立解を生み出す思考ツールです。このTOCクラウドを使うと、メタ認知ができるようになります。
非常にパワフルなのでビジネスや日常生活に取り入れることをオススメします。
TOCクラウドの詳細を知りたい方は以下の記事を参考にしてみて下さい。具体例を交えて詳しく解説しました。
まとめ|メタ認知は21世紀に豊かに生きるための必須スキル
改めて、この記事のポイントをまとめておきます。
- 情報に惑わされず、質の高い意思決定ができる
- 多様性のある環境で活躍できる
- VUCA時代に必須のスキル
- 21世紀の重要スキル「戦略的学習力」が身につく
- 感情に振り回されず心穏やかに生きられる
このように、メタ認知にはさまざまなメリットがあります。
- 自分の感情、思考、行動をモニタリングする
- 認知行動療法を実践し、「認知の歪み」を修正する
- 「Why?」で考えるクセをつける
- 物事の共通点を探す(アナロジー)
この記事で紹介した方法を実践して、メタ認知のトレーニングをしてみて下さい。
参考文献
メタ認知で〈学ぶ力〉を高める: 認知心理学が解き明かす効果的学習法
メタ思考トレーニング 発想力が飛躍的にアップする34問 PHPビジネス新書
Learn Better ― 頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ
異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養
自分でできるスキーマ療法ワークブック Book 1 生きづらさを理解し、こころの回復力を取り戻そう
心理職のためのエビデンス・ベイスト・プラクティス入門―エビデンスを「まなぶ」「つくる」「つかう」
21世紀のビジネスパーソンの3種の神器
世界的に著名なコンサルタントの大前研一氏によると、21世紀のビジネスパーソンの3種の神器は「英語」「IT」「財務(or経営)」です。グローバルに活躍する人の必須スキルです。
戦略的学習力やメタ認知力を身につけるのは、もちろん重要です。しかし、実は「英語力」が日本のビジネスパーソンのボトルネックとなっているケースが多いです。なぜなら英語力が低いと、いくらメタ認知ができていても、海外のビジネスパーソンに考えを伝えられないからです。
その結果、「仕事ができない人」と誤解されてしまいます。せっかく、スキルがあるのに認められなかったり活躍できなかったりするのはもったいないです。