アメリカが「人種のるつぼ」から「サラダボウル」に変わった理由

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「人種のるつぼ」「人種のサラダボウル」という言葉を聞いたことがありますか?

 

どちらもアメリカが多くの民族から成り立つ様子を表わす比喩(ひゆ)が、両者のニュアンスは異なります。

 

以前は「人種のるつぼ」の表現が一般的でした。しかし、次第に「人種のサラダボウル」と呼ばれることが増えてきています。

 

この記事では、「人種のるつぼ」や「人種のサラダボウル」の意味や、歴史的な背景を解説します。

これらの歴史を知ると、アメリカの人種や民族の歴史の一端を理解できるようになります。

 

 

人種のるつぼ(メルティングポット)と人種のサラダボウルの比較

多民族国家アメリカの比喩(ひゆ)

アメリカは多くの民族から成り立っています。

白人が60%強を占めるマジョリティですが、ヒスパニック、黒人、アジア系など多くの移民がアメリカで暮らしています。

 

このように、アメリカが多くの民族から成り立つ様子が、「人種のるつぼ(メルティングポット)」、「人種のサラダボウル」と、たとえられます。

以下で、「人種のるつぼ」、「人種のサラダボウル」が意味する違いについて説明します。

 

「るつぼ(メルティングポット)」は、金属を溶かす容器

坩堝(るつぼ)は耐熱性の容器で、理化学の実験や、工業分野で使われます。

金属などの素材を1000~2000℃に溶かして混ぜ合わせるのに使います。

 

英語では"Melting Pot(メルティングポット)"と呼ばれます。"Melt(溶かす)"、"Pot(容器)"という意味です。

 

加熱された、るつぼの中で金属が溶けて混ざり合う様子をイメージしてみて下さい。

 

「人種のるつぼ」とは、様々な民族がアメリカという国の中で、溶けて混ざり合い、一つの「アメリカ人」になっている様子を表します。

 

この比喩では、「るつぼ」がアメリカ合衆国、るつぼの中で溶けて混ざり合う金属がアメリカ国民(移民)を指します。

つまり、ヨーロッパ、南米、アジアなど様々な出身の民族が、アメリカで同化している、という意味です

 

「サラダボウル」は、野菜を入れる容器

一方、サラダボウルは野菜を入れる容器です。

サラダボウルがアメリカ合衆国、トマトやキュウリなどサラダの具の野菜がアメリカ国民です。

 

サラダのように具が混ざりつつも、カタチが残る状態を表しています。

つまり、それぞれの個性や文化が活かされ、尊重され状態、という意味です。

 

「人種のるつぼ(メルティングポット)」の歴史

次に、アメリカが「人種のるつぼ」と呼ばれるようになった歴史的背景を説明します。

19世紀後半にヨーロッパから大量の移民がアメリカにやってきた

もともと、アメリカはヨーロッパからの移民により発展しました。最初にアメリカに移住したのは1620年のこと。ピューリタン(清教徒)と呼ばれるイギリス人です。その後、西欧からの移民は増え続け1765年にアメリカ合衆国として独立を果たします。

 

さらに時代は下り19世紀後半になると、ギリシャ、イタリアなどの南ヨーロッパや、ロシア、ポーランドなどの東ヨーロッパからの移民が急増します。1880年~1915年頃にかけ、毎年アメリカの総人口に対して3~5%の移民が移住してきました。

いまの日本に置き換えると、毎年350~500万人の移民が増え続ける状態です。当時のアメリカが移民の受け入れにあたり、混乱する様子が想像できると思います。

 

「新移民」の急増によりアメリカ人が不安に

南ヨーロッパ、東ヨーロッパからの移民は、「新移民」と呼ばれました。一方、従来の西ヨーロッパからの移民は「旧移民」と呼ばれています。

「新移民」はアメリカ社会に適応しにくい条件がありました。

1. 宗教が違う
2. 言葉が違う
3. 識字率が低い

 

宗教が違う

アメリカ社会はプロテスタントです。最初に移住したイギリス人がプロテスタントだったためです。

一方、新移民はギリシャ正教、ローマ・カトリック、ユダヤ教などで、プロテスタントの文化とは、なじみにくいものでした。

言語が違う

アメリカでは英語が使われていましたが、新移民はギリシャ語、ポーランド語、ロシア語などを使います。つまり、言語がまったく異なっていました。

識字率が低い

旧移民の識字率は95%程度と非常に高い一方、新移民の識字率は50%程度。

 

旧移民にとって新移民は、「西ヨーロッパの基準にしたがえば、南ヨーロッパ、東ヨーロッパ系移民の大群は、まともに教育を受けておらず、社会的に更新的であり、その見た目も異様であった」と言われています。

このように、新移民の大群がアメリカに押し寄せたため、移民に対する不安が高まります。

 

多民族の登場人物を描いた戯曲「メルティングポット」が大ヒット

このような社会情勢の中、イギリスのユダヤ人作家イズリアル・ザングウィルが戯曲「メルティングポット」を発表しました。1908年のことです。戯曲(戯曲)とは、演劇の台本のことを表します。

この戯曲のストーリーでは、多くの民族が一つに溶け合って新しい民族、すなわちアメリカ人に生まれ変わる様子を表現していました。

 

このストーリーがアメリカ人の心に響いたようで、大ヒット作となりました。シカゴでは6ヵ月間のロングランを果たし、ニューヨークでは136回も公演されるほどの人気でした。

 

タイトルの「メルティングポット」は、「坩堝(るつぼ)」を表します。神の火が燃えるアメリカという大地のもとで、さまざまな民族が一つに溶け合い同化していく、との想いがこめられています。

この演劇のタイトルがもとになり、「人種のるつぼ(メルティングポット)」という表現が定着しました。

 

「移民がアメリカで溶け合う」コンセプトが希望をもたらした

なぜ、「メルティングポット」が大ヒットしたのでしょうか?

それは、民族が「溶ける」というイメージに強いインパクトがあったためです。

移民が大量に押し寄せ、不安が増していたアメリカ社会にとって、「移民が溶け合いアメリカに同化する」というコンセプトは希望をもたらすものでした。

 

 

「人種のるつぼ(メルティングポット)」への批判

このように、「人種のるつぼ」の考え方は広まりました。しかし、多くの批判にもさらされました。

1960年代、公民権運動がさかんに

1960年代、アメリカで「公民権運動」と呼ばれる人種差別に反対する運動がさかんになります。

最も有名なのは、”I have a dream.”の演説をしたマーチン・ルーサー・キング牧師でしょう。

 

これまで差別されてきた黒人をはじめとするマイノリティの権利を確立するため、アメリカ全体で差別に反対する運動をおこしました。

その過程で、「人種のるつぼ(メルティングポット)」に対する批判が高まります。

 

アングロサクソン系の白人文化の押し付けとの批判が高まる

なぜなら、「メルティングポット」が意味する「アメリカへの同化」は、アングロサクソン系の白人からの視点だからです。

同化するのはあくまでマイノリティの移民で、白人は何も変わらないのが前提となっています。

 

これは、見方を変えるとアングロサクソン文化の、マイノリティに対する強要と捉えられました。

そのため、マイノリティの権利を確立を主張する公民権運動をきっかけに、「人種のるつぼ(メルティングポット)」のコンセプトへの批判が高まりました。

人種のサラダボウルのコンセプトが主流に

マイノリティを尊重するコンセプト

公民権運動の後には、「外国からアメリカに移住した人たちが元々持つ文化を尊重するのが正しい」とされるようになりました。

 

このような背景で広まったのが、「人種のサラダボウル」です。マイノリティを尊重するコンセプトとして普及しました。

 

似た概念として、「文化の連邦体」「人類のオーケストラ」などと呼ばれることもあります。

 

文化多元主義から、多文化主義へ

「人種のサラダボウル」のコンセプトは、文化多元主義や、多文化主義とも呼ばれます。

 

「移民の文化を尊重する」という観点で、両者は似ていますが、実は大きな違いがあります。

文化多元主義は、1900年代前半に提唱された概念です。主には白人文化のみを対象にしており、黒人文化を対象にしていませんでした。

一方、多文化主義は公民権運動の後、1970年代頃から広まった考え方。黒人文化などすべてのマイノリティを含め、文化を尊重するというスタンスです。

 

このように、「人種のるつぼ」から「人種のサラダボウル」に変わった背景には、アメリカ人のマイノリティ文化への態度の変化があります。

 

まとめ|グローバル社会=人種のサラダボウル

この記事ではアメリカが「人種のるつぼ」から「人種のサラダボウル」に変わった歴史を解説しました。

その背景には「多文化主義」の思想があります。

 

実際、筆者はアメリカ企業と仕事をしていますがアメリカ人だけでなく、フランス人、ドイツ人、中国人、韓国人、インド人など様々なバックグラウンドを持つ人たちと関わります。

「グローバル社会=人種のサラダボウル」とも言えます。

 

つまり、今後は今まで以上に様々な文化の人々と関わる機会が増えていきます。

その時に大事なのは「異文化理解力」です。

 

とはいえ、異文化理解力は海外に出たり、外国人と関わるだけでは身につきません。なぜなら、これだけでは「異文化理解の本質」が分からないから。

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異文化理解力と英語力の両方が必要

グローバルに仕事をするには、英語力に加えて異文化理解力が必要だと実感しています。

この流れは、今後ますます加速していくでしょう。

 

 

 

とはいえ、英語力の重要性は今後も増していきます。なぜなら、アジアなど英語圏以外の人たちも英語でコミュニケーションをするから。

英語が話せないと、異文化理解力を発揮する前にコミュニケーションが取れません。

 

「自動翻訳が発達するから、英語はいらない」と思うかもしれませんが、特にビジネスシーンではそう簡単にはいきません

 

今では、実践で使える英語力を短期間で伸ばせるスクールが増えています。英語力はさっさと身につけてしまい、異文化の人々と関わる経験を積むことをオススメします。

 

 

参考文献

メルティングポットの誕生--メルティングポット論の系譜(1)

多元主義者によるメルティングポット論批判: メルティングポット論の系譜 (2)

カテゴリー
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これからの時代、「異文化理解力」は「英語力」以上に重要になっていきます。

なぜなら、自動翻訳ツールなどテクノロジーの進化のおかげで外国人とコミュニケーションをする機会が増えるからです。

 

これまでは、言語が壁になっていましたが、今後は言語の壁がどんどん薄くなっていきます。

そのときに重要になるのが「異文化理解力」です。

 

なまじ外国人とコミュニケーションが取れてしまうので、異文化のギャップが浮き彫りになります。

 

 

異文化理解力が身に付いていないと、

  • 知らぬうちに相手に失礼なことをして、信頼を失ってしまう
  • 相手の対応にイライラしてしまう

    といったことになりかねません。

     

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    とはいえ、異文化理解力を身につけるのは簡単ではありません。

     

    • 海外で暮らす
    • 「異文化理解」に関する書籍や記事を読む
    • ビジネススクールで「異文化理解」の講義を受ける
    • 「アメリカ人は●●、日本人は▲▲」といった豆知識を調べる

    残念ながら、こういったやり方では異文化理解力の本質はわかりません。

     

     

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