- 英語力は才能や遺伝で決まるのだろうか?
- 自分には英語の才能がないように感じる......。
私が英語コーチングをする中、このような疑問を持つ人を見てきました。
このような疑問に答えるため、さまざまな分野の書籍や論文を調べました。行動遺伝学、脳科学、心理学などです。その結果、英語学習業界にとって不都合な真実が分かりました。英語習得には、遺伝が約50%影響していることがデータで示されています。
では、「自分は英語に向いていない」と思う人は、英語習得をあきらめるべきなのでしょうか?
一見、矛盾するようですが、そうではありません。
科学的な知見を踏まえて、この不都合な真実への向き合い方を考察します。
- 英語学習業界の不都合な真実! 英語習得の50%は遺伝で決まる
- 双生児調査からわかる、外国語習得に与える遺伝の影響
- ワシントン大学が分子レベル、脳構造レベルで英語習得スキルを解明
- それでも英語習得をあきらめるべきでない4つの理由
タップできる目次
英語力は才能や適性が5割? 語学が得意な人の脳の特徴
- 勉強すればだれでも英語は身に着く
- 英語のシャワーを浴びれば、英語が話せるようになる
このような宣伝、広告をよく見かけます。
しかし、実際に試してみても「なかなか英語ができるようにならない......」と感じる人も多いのではないのでしょうか。
そこには英語学習業界で語られない一つの真実があるからです。
それは、英語力は遺伝から約50%の影響を受けるからです。
同じような学習をしても英語力が伸びる人、伸びない人がいます。その違いの50%は遺伝です。
遺伝が外国語習得に影響を与えるエビデンス(証拠)は数多くありますが、ここでは主な2つの結果を紹介します。
以下で詳しく解説します。
双子の研究からわかる遺伝と英語力の関係
最初に紹介するのは、行動遺伝学の研究結果です。
行動遺伝学では、以下の問に答えるべく大規模な調査が行われています。
- 能力や性格が遺伝で決まるか?
- それとも育ち(環境)で決まるか?
実際には双子を調査します。
一卵性双生児はDNAが全く同じです。そして、一卵性双生児の双子で、一人は親元に残り、もう一人は別の親に育てられるケースがあります。
つまりDNAはまったく同じで、育つ環境が異なる二人となるわけです。
この二人の能力や性格を成人した後に比べることで、能力や性格に遺伝がどの程度影響を与えているかが定量的にわかります。
能力や性格は遺伝の影響が大きい
そしてこれらの研究結果から驚くべき事実が判明しました。
多くの能力や性格は遺伝から大きな影響を受けているのです。
たとえば音楽は90%以上、スポーツや数学は80%、IQや学業成績は60~70%が遺伝で決まります。
プロの音楽家になるような人は、遺伝的に音楽が得意です。残念ながら才能がない人がいくら努力しても一流にはなれません。
これは、直感的にイメージできますよね。
そして、この研究結果の中に「外国語」の項目があります。外国語を習得する能力です。
外国語は50%が遺伝で決まります。音楽、スポーツ、数学などと比べ遺伝の影響は小さいものの、半分は遺伝で決まってしまいます。
つまり、生まれつき英語力を伸ばしやすい人と、伸ばしづらい人がいるということです。
※ご参考:日本人の9割が知らない遺伝の真実
英語習得の才能が脳の分子レベルで解明
2016年に、さらに驚くべき発見がありました。
ワシントン大学のPing C. Mamiyaらが、中国人留学生79人を対象に脳の構造や遺伝子と英語習得スキルの関係を調査しました。
具体的には中国人留学生の遺伝子や脳の構造の解析を行った後、16日間の英語力向上を目的とした教育を行いました。一日3.5時間のセッションを、週4日です。
この研究により以下の事実が明らかになりました。
- 英語学習の結果、脳の「白質」と呼ばれる部位に構造変化が生じる
- COMTと呼ばれる遺伝子変異が、英語学習の結果である脳白質の構造変化に影響を与える
- COMT遺伝子と、脳の白質構造変化を見ると、英語習得スキルの46%を説明できる
詳しくは以下の論文を見ていただきたいのですが、簡単に言うと「遺伝子⇔脳の構造変化⇔英語習得スキルに大きな関係がある」ことです。
※論文のリンク(Brain white matter structure and COMT gene are linked to second-language learning in adults)
遺伝子レベル、脳の構造レベルで解析した結果(英語スキルは46%が遺伝と脳構造で説明つく)が、双子の行動遺伝学で得られた結果(50%が遺伝)とほぼ一致しています。
これらの研究結果から、「英語習得スキルの半分は遺伝で決まる」と考えられます。
遺伝子レベルで英語力がわかってしまうのです。
英語が得意な人の特徴
また、性格的にも英語などの語学が得意な人には特徴があります。
- 人とのコミュニケーションが得意
- 英語習得が必要な状況にいる
- 立ち直りが早い
積極的に英語を使う人は英語力を伸ばしやすい。反対に引っ込み思案で、覚えた英語をなかなか使えない人は、英語力を伸ばしにくくなってしまいます。
英語が苦手な人と得意な人の特徴は以下の記事にまとめたので、詳しく知りたい方は参考にしてみてください。
英語力の才能は遺伝する|それでも英語習得を目指すべき5つの理由
ここまで英語力が遺伝の影響を受けることを、科学の研究結果をもとに解説してきました。
「私は英語の才能や適性がないから、英語習得はあきらめた方がよいのかな」と感じた人もいるかもしれません。
しかし、仮に英語の才能や適性がないとしても、英語習得を目指すべきです。
以下でその理由を説明します。
収入を伸ばすには英語力は必須
今後、収入を上げて良い暮らしをするには英語力はますます必要になります。
なぜなら日本企業もグローバル化しているからです。
たとえば日本の製造業(メーカー)は年々海外売上比率を増やしており、2018年には39.3%が海外での売り上げとなっています。
そのため取引先や顧客が海外企業となるケースが増えています。
そうなると、重要な仕事は海外企業が相手となり、英語でコミュニケーションをとる必要が生じます。
英語を身につけるとキャリアの差別化になる
実際、私の部署でも2010年頃から海外企業と一緒に仕事をする機会が増えています。
その結果、社内で重要な仕事は海外企業相手の仕事となり、英語力が求められるようになってきています。
現状ある程度仕事ができて、かつ英語力がある人材は少ないです。英語力を身に着けること差別化ができ、収入を伸ばしやすくなります。
日本人が英語を学ぶべき理由について、以下の記事にまとめているので参考にしてみてくださいね。
⇨日本人が英語を学ぶべき7つの理由【体験談あり】〜なぜ英語を学ぶのか〜
ビジネスシーンでは翻訳ツールは使いづらい
一方でテクノロジーの進化により自動翻訳の精度が高まっているため、英語力は不要になるのでは? と考える人もいます。
しかし、以下の記事で考察したように、現時点で社会人の人が引退するまでの期間に、ビジネスの交渉やディスカッションで自動翻訳ツールが普及する可能性は低いと考えられます。
⇒AIと自動翻訳の未来に英会話力は不要? ~求められる英語力の変化~
そのため、今後グローバルに活躍し収入を上げていくには、英語力は必須です。
ネイティブ並みの英語力は目指さなくてよい
ビジネスで使える英語には、ネイティブ並みの英語力は不要です。
なぜなら世界で英語を話す人口のうち77%はノンネイティブだからです。
発音が完璧でなくても、コミュニケーションが成立すればビジネスを前に進めることができます。
同僚から「ペラペラ」とみられるレベルで十分であって、具体的には以下の記事で解説しています。
⇒留学なしの30代が3ヵ月で英語ペラペラになるには? 【独学でもOK】
ビジネス英語は誰でも身につけられる
ビジネスで英語ができるレベルの目安である、「TOEIC900点」や「英語で会議をする」というのは、とても高いレベルに思えるかもしれません。
しかし実際には大したことはありません。ネイティブレベルとは程遠く、才能や適性がなくても到達できるレベルです。
スポーツや音楽に例えてみると、次のような感じです。
- スポーツの場合 ⇨ 地域の草野球チームでレギュラーとして試合に出られる程度のレベル。
- 音楽の場合 ⇨ 趣味でピアノを楽しめる程度のレベル。
プロのスポーツ選手やピアニストを目指すのであれば、才能に恵まれていないと難しいでしょう。
しかし、草野球チームで試合に出たり、ピアノを趣味で楽しんだりするレベルであれば、それほど才能は必要でないことがわかるでしょう。
英語力も同じです。
いくら能力に遺伝が影響しているといっても、TOEIC900点やビジネスで英語を使う程度のレベルであれば、仮に才能や適性がなくても十分到達できます。
英語力の半分は遺伝、残りの半分は「環境」
前の章で、英語習得スキルの50%は遺伝で決まると説明してきました。
では、残りの半分は何なのでしょうか?
それは「環境」です。
たとえば、まわりに英語を学習している人がいる環境の場合、英語を習得しやすくなります。環境がよいからです。
反対に、毎日飲みに誘われたり、家に帰るとTVやYou tubeを見たりしてダラけてしまう場合は、英語を習得しづらいでしょう。環境がよくないからです。
そのため、英語を学習しやすい環境をつくることが重要です。
たとえば、家族や同僚に英語学習することを宣言する、外国人の友人をつくる、英語スクールに通う、などです。
このように英語を習得しやすい環境をつくることで、遺伝以外の50%を変えることができます。
効果的な学習法なら誰でも英語力を伸ばせる
また、効率的な英語学習法を取り入れることも有用です。
なぜなら、前の章で紹介したデータは、「同じ学習をしたときの、英語力の伸び」が遺伝により50%の影響を受けるということだからです。
言い換えると、学習法自体を変えれば、もともと英語が得意な人よりも、英語力を上げられる可能性もあるということです。
「英語力アップに効果的な英語学習法」に関しては、心理学や第二言語習得論の分野で、すでに研究されています。実際の勉強方法に取り入れてみるとよいでしょう。
詳細は以下の記事をみてください。
ご参考:⇒英語の科学的な学習法5つのポイント|効率的な勉強法の秘訣
マインドセットの重要性【心理学の研究結果】
心理学者のキャロル・ドゥエックは、人のマインドセットと実際のスキルとの関係を調査しました。
マインドセットとは、「自分の能力をどうとらえているか?」という価値観です。
この研究によると、「自分の能力は固定されていて伸ばせない」と考える“硬直マインドセット”の人とくらべ、「自分の能力は伸ばすことができる」と考える“しなやかマインドセット”の人は実際に能力を伸ばしやすいとのこと。
つまり、「自分は英語力を伸ばすことができる」とマインドセットを変えるだけで、英語力を伸ばしやすくなるというわけです。
これは筆者の推測ですが、「脳の可塑性」が影響しているのだと考えられます。脳構造は固定されているわけではなく、学習により変化します(これを「可塑性」と呼びます)。
マインドセットが変わり、思考や行動が変わることで、脳の構造も変わる結果、実際に能力を伸ばしやすくなるのだと考えらえます。
まとめ|ビジネス英語は才能や適性がなくても身に着けられる
この記事では、英語力と才能や適性の関係を、遺伝や脳に関する研究結果をもとに考察してきました。
もう一度ポイントをまとめておきます。
- 英語習得スキルの50%は遺伝で決まる
- TOEIC900点やビジネス英語レベルであれば、才能や適性は気にしなくてOK
- 環境とマインドセットにフォーカスし、効果的な学習法を取り入れることが重要
この記事を一言でまとえめると以下の通りです。
たしかに英語習得スキルに遺伝は影響している。しかし普通の日本人が目指すビジネス英語レベルくらいなら、才能や適性を気にする必要はない。環境、マインドセット、効果的な学習法にフォーカスすべき。
数か月~1年間、本気で英語に取り組めばTOEIC900点や、ビジネスで使える英語力を身に着けられます。
短期間で英語力を伸ばすなら英語コーチングがおすすめ
もし環境の力を使い、効果的な学習法を実践したいのであれば、英語コーチングスクールがオススメです。
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実際、英語コーチングスクールの卒業生は目覚ましい成果を出しています。
- 3ヶ月でTOEICスコアを300点伸ばした
- 3ヶ月でビジネス英会話をマスター
一人や二人ではなく、こういう卒業生がゴロゴロいます。